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アメリカから考える日本の座標軸

【アメリカから考える日本の座標軸 10】
古川勝久


日本の情報発信力強化のために――

抜け出したい知日派米国人頼り

(2002年4月16日付)


 こちらにいていつも不思議に思うことがある。日本の意見とか声というのは、日本の新聞には大きく掲載されるのだが、肝心のアメリカ側に誰がいつどうやって伝えているのだろうか? 筆者の実感から言えば、おそらくあまり誰もやっていないようにしか思われない。

 去る3月末、筆者の研究所が主体となり、ワシントンDCで日米軍備管理軍縮非公式協議を開催した。日本からは研究所が率いる専門家団が派遣され、外務省からも数人出席した。米国からも国務省やエネルギー省などから多数の政府関係者が参加、さらにジョン・ボルトン国務次官やマイケル・グリーン国家安全保障会議アジア部長なども参加し、会議そのものは成功裡に終わった。

 だが一つだけ重要な問題が残った。会議終了後、米国側参加者たちから「もっと日本の意見を聞きたかった」という意見が寄せられてしまったのである。

 たしかに、日米共同の会議で「中国軍事力」について議論すると、いつの間にか主題が「米国の対中国政策」に変わってしまい、「日米で中国の軍事力増強にいかなる対応措置を共同で講じるべきか」という肝心の点はほとんど議論されないことが多い。日本人出席者も、アメリカ関連の情報収集につい汲々としてしまい、質問も米国側の見解を問うことに陥りがちだ。肝心の日本側の意見が聞かれることは少ない。

 また日本では、ボルトン国務次官は「ブッシュ政権の一国至上主義を体現する人物」として極めて厳しく批判されるのだが、いざ本人を目の前にすると、誰も面と向かって意見を言う人がいない。質疑も米国の軍備管理政策を巡る事実確認がほとんどだ。

 日本国内で米国高官を批判しながら、肝心の本人の前で萎縮してしまうようでは、単なる「内弁慶外交」といわれても仕方がない。石原慎太郎東京都知事も日本国内では厳しく米国を批判するが、昨年九月のワシントン訪問時には日米同盟の重要性を強調した上で、対中批判ばかりを展開していた。

 前回の拙稿でも紹介したが、宮本雄二・外務省軍備管理・科学審議官は月刊誌『論座』4月号にブッシュ政権の軍備管理・軍縮政策に批判的な論文を掲載、ここで日本の軍備管理・軍縮政策の指針を提示し、これが外務省では「宮本イニシアチブ」と呼ばれているようだ。

 ただ問題なのは、肝心の米国政府関係者には誰一人としてこの内容が伝わっていないことだ。米国を批判する論文をなぜ日本国内だけで発表するのか? 同論文の英訳は「特にまだない」。

 ちなみに、今年5月に出版予定の「軍備管理・軍縮白書」についても「今のところ英語版作成の計画はない」。中国でさえ、軍備管理白書出版の際には英語版もほぼ同時に出版するのに、なぜ日本外務省にはできないのか?

 「こちらにいる日本人駐在員の任務は、あくまでも情報収集であって情報発信ではありませんから……」。ある日本経済団体駐在員のコメントだ。この認識は、日本大使館でもかなり幅広く共有されているように見うけられる。

 結局、米国で日本の事情を説明するのに、米国人の知日派が起用されるばかりだ。これが米国内で展開される日本外交の典型例である。私たち日本の民間人も政府ばかりに頼るのではなく、自らが米国に直接、情報を発し続けることを常日ごろから心がけるべきであろう。

 米国内では知日派米国人にピンチ・ヒッターをお願いするばかりで、日本国内では好き勝手に対米批判を展開する「背面外交」はそろそろ終わりにしたい。さもないと、日本は少なくともこの面では中国に負けることになりかねない。

(モントレー国際問題研究所主任研究員)