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(2001年11月20日付)
「なんでこうなってしまったんでしょうね…」――11月5日、ニューヨークの国連総会。米国は、日本提案の核廃絶決議案「核兵器の全面的廃絶への道程」に反対票を投じた。
事前の実務レベル折衝では、米国務省は日本外務省に「棄権」を通告。それが後に「反対」へと変更されたのはその後の、宮本軍備管理・科学技術審議官とボルトン米国務次官との会談の際。「反対票を投じよと言われた」。予想を覆す言葉がボルトン氏の口から発せられた。
決議案が「包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効」を明記したのが、反対の理由である。外務省の従来の方針は、「核廃絶決議案は米国が反対する内容にしない」というもの。これには重要な意味合いがある。
日本は過去の核不拡散条約(NPT)再検討会議で、「米国をCTBT発効に導くには、穏健で段階的なアプローチしかない」として、核廃絶の急先鋒、「ニュー・アジェンダ・グループ(NAG)」諸国をなだめ、同諸国と核兵器保有国との全面的対立を防ぐ重要な役割を果たしてきた。
ここで米国の反対を招かないことは日本の仲介能力を信頼してもらうために必須だった。しかしその日本の穏健派路線が米国に否定されてしまった。
今後NAG諸国は、「やはりアメリカには強硬に迫るしかない」として核兵器保有国と全面対決の姿勢を一層強めてゆくだろう。もはや日本は次回のNPTレビュー会議での仲介役としての面子を失ってしまった。
「反対票を投じよ」との意思決定が、ブッシュ政権内のどこで下されたのか定かでない。同政権は日米同盟関係の強化・維持を最重要アジェンダ(課題)として掲げてきた。
しかし今回、肝心の日米同盟推進チームは東京開催の日米安全保障高級事務レベル協議で手一杯だった。彼らがこの国連決議案の調整に関与した形跡はない。
ブッシュ政権内の対アジア政策の主流派が東京に勢揃いして日米同盟の重要性を確認しあっていた一方、同政権内のCTBT反対派はジュネーブで日本の核廃絶決議案を潰したという状況であろうか。
核軍縮というマルチラテラリズム(多国間主義)政策が、日米同盟というバイラテラリズム(二国間主義)政策、またはアジア地域安全保障というリージョナリズム(地域主義)政策といかにリンクしていないか。今回の核廃絶決議案を巡る一連の経緯がそれを物語る。
日本の事情も全く同じだ。今決議案を巡り、外務省内で軍備管理・軍縮課と北米局はどこまで協力しあったのか? 国連決議案が重要であれば、なぜ日米高級事務レベル協議で議論されなかったのか? もとよりブッシュ政権内のCTBT反対派の論理によれば、「核の傘の有効性確保のために核実験はやがて必要」となる。
彼らは核実験の「一時中止」には賛成だが、「禁止」には反対だ。しかし、もし米国が核実験を再開すれば、中国、インド、パキスタンなども次々に核実験を再開しよう。また現在、世界中の国々が核実験の「一時中止」を遵守しているが、これは未来永劫に続くわけではない。あくまでもCTBT発効を前提とした「一時中止」にすぎない。
しかもCTBT抜きではNPT体制の存在意義さえ揺るぎかねない。特に日本にとっては、隣国中国の核兵器近代化の阻止は極めて重要で、CTBTで中国の核実験に国際法の枠をはめることは死活的課題だ。
CTBT発効には「核廃絶」という理想だけでなく、アジア地域の安全保障上からも極めて切実で重要な意味合いがある。今後、核軍縮については多国間協議だけでなく、日米二国間協議でも協議し合うことが求められる。
(米国・外交問題評議会研究員)