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(2001年7月17日付)
またもや沖縄で米軍兵士による事件である。米国軍人による犯罪が絶えない。米国軍部内でいったい何が起こっているのだろうか?
国防予算削減に伴い、人件費削減のために常備軍をスリム化して予備役兵を増やしてきたこともあり、米軍の規律、士気の低下は重要問題となりつつある。
さらに、やはり数万人規模の基地では人口規模が大きすぎて、犯罪発生件数をゼロに抑えることができないという現実もある。これまで米国政府も犯罪発生防止に向けて様々な強化策を採用してきたが、犯罪件数のさらなる削減は至難のようだ。
ただし米国軍人による犯罪に悩まされているのは、日本だけでなく米国自身や他の同盟諸国も同様だ。驚いたことに、これでも日本の状況は、米国を含む他の国々のそれよりもまだ「まし」なのである。米国軍人一人あたりの犯罪発生率は在外米軍基地よりも米国内基地周辺の方が多い。
また激しい批判にさらされている日米地位協定だが、これでも米国が他の同盟国と結んだ、どの地位協定よりも「進んだ」内容となっている。米国軍人による犯罪は世界各地で発生しているが、起訴前に容疑者を拘留した国は、米国を除けば日本だけなのである。
さらに、今回も身柄要求から引き渡しまでの間、被疑者は米国政府の圧力もあり、日本の警察の取り調べにずっと応じており、事実上、引き渡し後とほぼ同様の取り調べを受けていた。
もちろん、「だから日本は現状で満足すべきである」、などと主張するつもりは毛頭ない。しかし、米国政府が困難な国内調整を経ながらも日本をできるだけ特別扱いしようとしてきた姿勢だけは理解しておいてもよいかもしれない。
本来、1995年の沖縄少女暴行事件の後、まさに今回のような事件を想定した事件処理メカニズムが日米間で準備されていたはずだったが機能しなかった。この点は日米両政府の落ち度である。「運用改善」という合意に達した後は危機的状況が発生するまで細部を詰めてこなかった。
またブッシュ新政権の新しい安全保障政策スタッフ、特に国防総省の新幹部たちにはこのメカニズムさえうまく引き継がれていなかったようだ。アジア太平洋担当国防次官補も同次官補代理もまだ任命されておらず、肝心の国防総省内に日本のカウンターパート(担当)がいない事態は、問題の迅速な処理の妨げとなってしまった。
では、今後の地位協定改定の見通しはどうか?
これは米国政府にとって決して容易な話ではない。
米国防総省は被疑者の人権にどうしても配慮せざるをえない。もし人権擁護が不十分な国の司法制度に米国軍人を起訴前に引き渡せば、その軍人から後に訴えられる可能性が十分にある。
特に日本の司法制度の実態はあまりよく理解されておらず、むしろ国連人権委員会の日本司法制度への改善勧告(例えば代用監獄の問題……)などが目立って報道されてきたため、「日本では被疑者の権利が十分に守られていない」との懸念が一般的だ。「日米地位協定の改定は日本の司法制度改革とワンセットでなければ難しい」との率直な声も聞かれる。
米国政府は、米国の司法制度との整合性と、同盟関係の強化・維持という二つの異なる要求に応じねばならず、ジレンマに陥っている。
ブッシュ新政権は「日米同盟強化」を最重要課題の一つに掲げているが、大国同士で親密になろうとするほど、安全保障以外の制度的差異さえもが同盟関係全般に大きく影響してくる。日米双方が各々の司法制度を巡る誤解を取り除くことは、重要な第一歩のように思われる。
(米国・外交問題評議会研究員)