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(2005年3月1日付)
国連本部での会合「北京プラス10」に注目 |
地球温暖化防止に関する「京都議定書」の発効(2月16日)に合わせて、ワンガリ・マータイさんが来日、2月18日には池田SGI会長と会談した。
ケニアの環境副大臣を務める彼女は、東アフリカの女性として初めての博士号を取得、植樹による環境保護運動、いわゆる「グリーンベルト運動」を創設・指導し、昨年、アフリカ人女性初のノーベル平和賞に輝いた。
彼女はまた、ケニア民主化運動にも熱心で「緑の闘士」とも呼ばれた。環境、女性、アフリカ、そして人権――。その足取りは、あたかも21世紀の人類の課題と針路を象徴するかのようでもある。
ところで、2月28日から3月11日までの日程で、「国連女性の地位委員会」閣僚級会合(通称「北京プラス10」)がニューヨークの国連本部で開催される。今年は、1995年に北京で開催された第4回世界女性会議からちょうど10年を迎える。
北京会議では、「エンパワーメント」をキーワードに、女性が社会のあらゆる分野で力をつけ性差別や暴力をなくすことを目指して女性政策の国際基準となる「北京行動綱領」が採択された。
約180カ国の政府や100以上のNGO(非政府組織)の代表が参加する今回の会合の狙いは、各国における「綱領」の達成度を検証し、今後の取り組みについて話し合うことにある。
こうした女性の人権はもとより、これまで国際社会において人権問題は、各国が自由に決定しうる国内問題とされてきた。
その考えを一転させたのが第2次世界大戦時のナチス・ドイツによるホロコーストであった。
この経験を通し、人類は平和と人権が不可分であり、平和の基礎として人権が国際的に保障される必要があるとの認識をもつに至った。戦後創設された国連は、人権の尊重をその目的として掲げるとともに、1948年には「世界人権宣言」を採択、66年には「国際人権規約」を採択した。
さらに、「拷問禁止条約」や「人種差別撤廃条約」「子どもの権利条約」等の人権諸条約を採択して各国の批准を促すとともに、報告・通報制度等の国際的な実施措置を通じて、各国の人権水準の向上に努めてきた。
そのようななか、75年の国際婦人年を契機に女性問題に焦点を当てた一連の国連会議が開催され、79年にはいわゆる「女子差別撤廃条約」が採択された。
およそ男性支配の国際社会を反映し、既存の国際法体系は男性の利益を擁護する制度として機能してきた。
国際人権規範も例外ではなかった。その意味で、ジェンダー(社会的・文化的性差)の視点から女性の人権を定式化した95年の「北京行動綱領」は、国際人権法の地平を大きく開くものであった。
この10年、各国は女性政策の実現に前向きに取り組んできた。カナダやオーストラリア、韓国など、かなり進展をみせた国々もある。日本も85年に女子差別撤廃条約を批准、それにあたって国籍法を改正し、従来の父系主義を父母両系主義に改めた。
また、86年には男女雇用機会均等法が施行された。この10年では、同法の改正や育児・介護休業法、ドメスティック・バイオレンス防止法の施行など法整備は進んだ。しかし、国連開発計画が示した昨年のジェンダー・エンパワーメント指数(女性の社会的進出度を測る国際的指標)は、対象国78カ国中38位とふるわず、世界の中では後れをとっている。
「戦争と暴力の世紀」といわれた20世紀。紛争や災害、貧困の犠牲になってきたのは常に女性や子どもなど社会的弱者であった。これらの人々が真に生存と人権を保障される世界こそが「平和」の意味するところであろう。
国連のアナン事務総長は、2000年の国連特別総会「女性2000年会議」で次のように述べた。「紛争予防における最善の戦略とは、平和創造者としての女性の役割の拡大にある」と。
その意味において、女性の参画と地位向上は社会の成熟と平和の進展を占うひとつのバロメーターであるといえよう。「女性の世紀」への期待を込めて、今回の会合のゆくえを見守りたい。
(創価大学教授)
なかやま・まさし 1959年、兵庫県生まれ。創価大学大学院博士前期課程修了。専攻は国際法。共著に『地球市民をめざす平和学』、論文に「国際テロと国連安全保障システムの課題――米国による対アフガン報復攻撃と自衛権をめぐる議論を中心として――」など。2000年から2001年まで、ハーバード大学ケネディスクール客員研究員。