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世界情勢ウオッチ−国際法の視座から

(2005年1月4日付)


地球市民社会の形成とNGOの役割
人間の視点から国際関係を再構築


 1995年の阪神大震災から、今月17日ではや10年となる。当時、国の対応の遅れと危機管理能力の甘さが厳しく問われたが、その一方で、民間ボランティアやNGO(非政府組織)の迅速な行動を通して、その存在と役割があらためて見直されるきっかけともなった事件であった。

 NGOを時として“反政府運動”ととらえてきたわが国にとっては、一つの大きな転機であった。世界に眼を転じれば、このようなNGOを中心とした動きは、今や国境を超えた市民ネットワークとして広がりをみせている。この傾向は冷戦後とくに顕著である。

 昨年11月から、対人地雷禁止条約の初の再検討会議がケニアのナイロビで開かれた。同条約は、対人地雷の使用、開発、生産などを禁止した条約で、1997年に採択され、99年に発効した。

 敵を殺すことではなく負傷させ、戦意の喪失を狙いとする対人地雷は、兵士と一般市民を無差別に殺傷するだけでなく、除去されるまで効力が残るなどの性格を併せ持つことから「悪魔の兵器」と呼ばれてきた。世界各国の保有数は2億5000万個とされ、年間の死傷者1万5000〜2万人の8割以上が民間人である。

 米露中の未批准など、全廃への道のりは遠いが、この極めて非人道的な兵器を禁止するために、条約の作成および廃絶への原動力となったのが、「地雷禁止国際キャンペーン」(ICBL)というNGOの連合体であった。

 このように多国間条約というグローバルな規範形成にNGOネットワークが大きな影響力を与えた例は、地球温暖化防止に関する気候変動枠組み条約および京都議定書の締結にかかわった「気候行動ネットワーク」(CAN)や、戦争犯罪を裁く国際刑事裁判所規程の採択、発効を推進した「国際刑事裁判所を求めるNGO連合」(CICC)などにもみることができる。これらNGOが「志を同じくする諸国」と連携することにより、条約を実現させたのである。

 これまで国際社会において、外交や条約締結は国家の専権事項とされ、個人やNGOは、国家との関係において常に従属的、受動的地位におかれてきた。国連憲章は、NGOに対し経済社会理事会との協議資格を認めたが、その権限は大きく制限されるとともに、NGOの参加は米ソ対立の中で翻弄されてきた。

 このような状況に変化をもたらしたのが、冷戦の終結であった。国際社会の関心は、環境や人権、開発といった非軍事的課題に移るとともに、各国の民主化やIT(情報通信)革命が国境を超えた市民社会の台頭をもたらした。

 その最大の転機は、1万5000人ものNGO代表が参加した1992年の地球サミットであった。その後、国連主催の様々な国際会議へのNGOの参加が一般化し、2000年に開かれた国連ミレニアム・サミットでの宣言では、NGOを不可欠のパートナーとして国連との連携を明記したのである。

 今後、NGOにとっての最大の課題は、誰を代表し、いかなる価値を実現しようとしているのかといった正統性の確保であろう。しかし、底流にある人道主義と地球的な民主化の潮流を見逃してはならない。

 その意味で地球市民社会の台頭は、既存の国家中心の国際関係を人間の視点から再構築しようとする動きとして、本年60周年を迎える国連の改革論議を含め、グローバル・ガバナンスにおける新たな世界秩序の可能性を示すものといえよう。

 (創価大学教授)