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(2004年12月7日付)
平和主義の精神を空洞化させるな |
昨今の国際安全保障環境の変化の中で、わが国の防衛のあり方が大きく見直されようとしている。冷戦構造を前提に、独立国として必要最小限の防衛力を保有するとの「基盤的防衛力」構想にもとづき、1976年に策定された「防衛計画の大綱」は、近々発表される新「防衛計画の大綱」において「多機能弾力的防衛力」構想へと大きく転換することになる。
その内容には、9・11米同時多発テロに象徴される国際テロ、大量破壊兵器、そして弾道ミサイルの技術の拡散といった冷戦後の「新たな脅威」への対応や、国際平和協力活動への要請に応えるといったことが含まれている。ところで、それとの関連で、「武器輸出3原則」の緩和をめぐる議論が気になる。
武器輸出3原則とは、平和国家として武器輸出を厳しく制限するために、1967年、佐藤首相(当時)が国会答弁で表明したわが国の基本方針で、(1)共産圏諸国(2)国連決議により武器等の輸出が禁止されている国(3)国際紛争の当事国、またはそのおそれのある国――への武器の輸出を禁止することを内容としている。
その後、1976年には、三木首相(当時)が対象地域以外への武器輸出も「慎む」という方針から「武器輸出に関する政府統一見解」を示し、事実上一切の武器輸出が禁止されることになった。
今回の3原則緩和の背景には、北朝鮮による弾道ミサイルの開発と98年に起きたわが国に向けてのテポドンの発射を機に、日米間で加速したミサイル防衛(MD)システムをめぐる問題がある。
現在進められているこの共同技術研究が「生産段階」へ移行する際に、米国への部品の輸出ができない事態が想定されることや、現在の3原則では他国との連携が制約され技術開発で後れをとることなどから、見直し機運が高まったのである。
経団連や小泉首相の私的諮問機関である「安全保障と防衛力に関する懇談会」も相次いで緩和の必要性を提言。当初政府は、ミサイル防衛に加え、米国を中心とした国際的な共同開発プロジェクトへの参加などについても3原則を緩和する案を与党側に提示した。
しかし、新「防衛計画の大綱」に合わせて発表される武器輸出3原則の緩和に関する官房長官談話の原案によれば、結局、ミサイル防衛システムの関連部品に限定する方向で落ち着きそうだ。
たしかに、国際環境の変化の中で防衛構想を見直すことは時代の要請ともいえよう。また、談話の原案では、3原則を基本的に維持する姿勢を示している。しかし、武器輸出3原則は、いわゆる「非核3原則」と並んでわが国の平和外交の柱として定着してきた重要政策であり、過去の歴史もふまえ軍事大国にはならないとの理念を具体化した国是である。
そして、3原則の堅持がアジア近隣諸国をはじめ、国際社会におけるわが国への信頼にもなってきたことを忘れてはならない。その意味において、3原則の扱いについては一層の慎重な議論と判断が求められよう。なし崩し的な緩和によって、3原則の根底にある平和主義の精神を空洞化させることにだけは決してならないよう、今後の賢明な対応を望みたい。
(創価大学教授)