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世界情勢ウオッチ−国際法の視座から−

難民問題と改正入管法

(2004年7月6日付)


人道大国・日本への第一歩に


 「我々は『難民』と闘っているのではなく、『難民問題』と闘っているのです」――前・国連難民高等弁務官の緒方貞子さんの言葉である。20世紀は「難民の世紀」ともいわれたが、まさに国境なき難民問題は、21世紀に入っても私たちの前に横たわっている。

 いわゆる「難民条約」によれば、「難民」とは、「人種、宗教、政治的見解などを理由に本国で迫害される恐れがある人」のことを言う。しかし、紛争や自然災害、飢餓などを理由に保護を求める広義の難民も含めると、その数は現在、地球上で約2200万人にものぼると言われる。

 第2次世界大戦後、国際社会は、難民保護のための国際機関として国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)を創設、1951年には難民条約を採択し、難民の救援・保護にあたってきた。

 わが国が、難民条約に加入したのは、それから30年後、インドシナ難民の大量流入という「外圧」をきっかけとしてであった。しかし、特別枠として受け入れたインドシナ難民を除く、条約難民のわが国の認定数は、昨年までで315人。昨年1年だけをみると、わずか10人である。

 それは、難民認定と受け入れは各国の判断に委ねられているからである。毎年2万〜3万人の難民を受け入れている米、独、英などに比べると先進国のなかでケタ外れに少ない。

 もちろん、地理的、社会的条件の違いはある。また、UNHCRへの拠出額や難民・復興支援などでは、日本は世界にひけをとらない。しかし、難民受け入れに関しては、認定の厳しさとともに先進国として応分の負担をしてこなかったことへの批判があった。

 そのような中、5月27日、難民認定制度の見直しと不法滞在者への対策強化を盛り込んだ「改正出入国管理・難民認定法」が国会で成立した。難民条約への加入に伴い、わが国に難民認定手続が導入された1982年以来、初めての制度改正となる。

 今回の見直しは、2002年5月に中国・瀋陽の日本総領事館で起きた駆け込み事件がきっかけとなった。在外公館で起きた事件ではあったが、助けを求めて駆け込んだ北朝鮮からの亡命者を保護しないという対応が、そのまま日本の難民政策を映し出すものとして厳しく問われることになったのである。

 改正法は、(1)難民申請が入国から6カ月以内で、難民申請が可能な第三国を経由していないなどの要件を満たせば仮滞在を認める、(2)難民と認定されなかった場合の異議申し立ての審査に第三者としての民間の参与員が関与する、などが柱となっている。従来の問題点を改善し、難民のおかれた状況や審査の客観性に配慮した内容となっている。

 同時に、仮滞在にあたっての、「第三国を経由せず直接入国」という厳しい条件など、今後に課題も残した。また、本来の難民と、いわゆる「経済難民」、不法入国者、テロリストなどの犯罪者の判別という出入国管理上の要請もある。そして、紛争や飢餓など難民を生み出す根本原因への国際的取り組みが重要であることは言うまでもない。

 しかし、より大切なことは制度改革に伴う私たち自身の意識改革である。難民問題への対応は、その国の人権・人道意識を占うバロメーターでもある。本年は、日本の開国よりちょうど150年。今回の改正が「難民鎖国」から「人道大国」への「開国」の第一歩となることを願いたい。

 (創価大学教授)