Current Directory is http://www.seikyo.org/【Seikyo Media Page】Copyright (C) 1997-2004 by The Seikyo Shimbun.



メディアのページ

世界情勢ウオッチ−国際法の視座から−

小泉首相の平壌再訪に思う

(2004年6月1日付)


日朝間の不幸な歴史に終止符を


 先月22日、小泉首相が1年8カ月ぶりに北朝鮮を訪問し、金正日総書記と会談、拉致被害者家族のうち5人の帰国が実現した。その成果については評価が分かれているが、成否はむしろ今後の進展にかかっている。

 しかし、前回の訪朝後、拉致問題をめぐって膠着状態に陥っていた日朝関係を打開し、2002年9月17日の「日朝平壌宣言」の誠実な履行が両国にとって極めて重要であることを再確認し合うとともに、国交正常化交渉の再開を合意した意義は大きい。

 なぜなら、日朝国交正常化は、わが国にとって残された最大の戦後処理問題であるとともに、北東アジアに残る冷戦に終止符を打ち、地域の安定と平和をいかに築くかという歴史的試みでもあるからである。

 「日朝平壌宣言」に示されているように、今日、日朝間には3つの問題が横たわっている。

 第1は、「日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題」と記された拉致の問題である。拉致は、国家主権の明らかな侵害であるのみならず、国際刑事裁判所規程第7条が規定する「強制失踪」として、「人道に対する罪」に該当する国際犯罪である。

 国連人権委員会もこの問題を取り上げ、本年4月15日、北朝鮮の人権状況を厳しく非難し、拉致問題の解決を求める決議を、昨年に続いて採択した。日本としては、安否不明者の再調査を約束した北朝鮮に対して誠実な対応を強く求めていくことが必要である。

 第2は、核およびミサイルの問題である。前回の日朝首脳会談の翌月、北朝鮮は核開発を自ら認め、2003年1月には、核拡散防止条約(NPT)からの脱退を表明した。これは、93年、米朝間で起きたいわゆる「朝鮮半島核危機」を回避して約束された、94年の「米朝枠組み合意」に対する明白な違反である。

 今後、核問題は6カ国協議に委ねられることになるが、イラク問題や大統領選挙を控えて身動きのとれない米国と北朝鮮の関係のなかで、日朝交渉は6カ国協議を補完するものとなろう。これら拉致と核・ミサイル問題の包括的解決は国交正常化の大前提である。

 第3は、20世紀における日朝関係の不幸な歴史の清算の問題である。日韓併合による植民地支配から日本の敗戦を経て朝鮮戦争による南北分断、1965年の日韓国交正常化へといたる冷戦構造の力学の中で、北朝鮮は孤立化を深めた。拉致問題はまさにこのような中で発生したのである。

 そして、冷戦終結による後ろ盾、ソ連の崩壊後は、核と軍備増強による瀬戸際外交に生き残りをかけるようになる。核問題の背景である。

 日朝平壌宣言は前文で次のように述べる。「日朝間の不幸な過去を清算し、懸案事項を解決し、実りある政治、経済、文化的関係を樹立することが、双方の基本利益に合致するとともに、地域の平和と安定に大きく寄与するものになる」

 国家間の対立が民族や家族、そして人間の分断を招くという悲劇と過ちを再び繰り返してはならない。今回の小泉再訪朝が両国間の不幸な歴史に終止符を打ち、「不正常な関係」を「正常な関係」へと転換する第一歩となることを真に願うものである。

 (創価大学教授)