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(2001年5月8日付)
四月中旬、新聞各紙の外電面に奇妙な記事が掲載された。西アフリカ・ベニン沖のギニア湾で三百人以上の「子供の奴隷」を乗せた船が消息を断ったというのである。続報もなく成り行きが懸念されていたが、五月二、九日合併号の『ニューズウイーク(日本版)』の「また子供が売られていく」が回答を与えてくれた。
ベニン当局の発表では、報道の二日後、問題の船は首都コトヌーの港に戻った。子供の数は三十一人、国外での仕事を求めて乗り込んだものらしい。報道を知った船長がトラブルを恐れ自発的に帰港したようだ。
だがこの事実は、西アフリカの国々が抱える深刻な貧困問題をあらためて露呈させた。ベニン、トーゴなどの最貧国では児童就労は厳しい現実で、十三歳以下の子供の四割が働く。
比較的豊かな産油国のガボンなどでメイドや物売りをすれば、衣食も与えられ親への仕送りもできるという期待から、出稼ぎをアゲゲ(冒険に行く)と呼んで子供の願望をそそる。しかし劣悪な労働環境で虐待され、タダ働きのような実態に泣く子供も多い。
仲介人が農村などを回り、一人十五〜二十ドルほどで子供を集めて外国に連れ出す“人身売買”はすでに常習化しており、国連では二十万人の子供が“奴隷”にされ、ココア農園などで働いているとみている。世界銀行は一日一ドル以下で暮らす人を貧困層と定義するが、アフリカにはこの人々が三億人、とくに西アフリカに集中している。
人口の四分の三が農民だが自給自足にはほど遠く、慢性的飢餓に苦しむ。安定雇用は望めず増え続ける人口、貧窮の輪廻は容易に断ち切れそうにない。十年前、取材でコトヌーを訪れた筆者が見たのは、広がるスラムに一つだけ聳える外国資本の白亜の高層ホテル、蜃気楼めいた異様な風景だった。スラムの子供は今夜もアゲゲを夢みているのか。
(山本栄一・ジャーナリスト)