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(2001年1月30日付)
「世田谷一家四人殺し」「KSD事件」といった記事が氾濫(はんらん)するこのところの週刊誌だが、「うつ(鬱)を克服する」(『サンデー毎日』一月二十八日号)は注目していい。同誌で精神科医が「うつ病は現在では国民病として蔓延(まんえん)し、その指標は自殺者の増加になって現れている」というように、警察庁の統計でも一昨年の自殺者は三万三千人とこれまでの最高を記録、しかも四十から五十歳代の中高年の男性が四〇%を占めている。うつの“黒い影”はいま社会の中堅層に襲いかかっているのだ。
集中力、思考力が低下し感情面も不安定、たえず自責感にさいなまれるうつ病患者は、数十人に一人とされ、現代社会のストレスがいかに大きいかを物語っている。
いや、こうした暗い現象は大学生の間にも広まり、『AERA』(一月二十九日号)の「大学生の自殺急増の今なぜ」では、一昨年の二十歳から二十四歳の自殺者は千四百二十六人(厚生省調査)で大学生が目立つ。全国大学生活協組連合会が遺族に給付金を支払った自殺者数は十年前の五倍にもなる。
中高年の場合は、会社の上司、部下から重圧を受ける“サンドイッチ症候群”に悩み、家庭でも居場所がなく心が休まらないストレスという症例が多く、一方、大学生に顕著な例は「自分の目標や楽しみを生み出せない惨(みじ)めさ」があげられている。
両誌とも週刊誌の限界として「兆候に気をつけ早期の療養を」といった程度の対策で終わってしまうが、ここで指摘しなくてはならぬのは、狂った経済社会がもたらした精神的奇型、なにより生命力の枯渇ではあるまいか。不安、無気力という正体不明のクモの糸にがんじがらめにされる人々。IT革命による過剰な情報の奔流(ほんりゅう)は、バックボーン喪失の悲劇をさらに拡大するだろう。寒夜に耳をすますと「オレは何をしたらいいんだ」…そんな若者の悲鳴が聞こえないか。
(山本栄一・ジャーナリスト)