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(2000年8月8日付)
作家の池宮彰一郎氏は絶妙なストーリー・テラーとして知られ、多くの歴史上の人 物に新解釈の光を当てるが、最新作『本能寺』では、斬新な織田信長像を浮き彫りに した。
『サンデー毎日』(八月六日号)は同書をめぐり、池宮氏と山内昌之・東大大学院 教授(国際関係史)の対談を掲載、ここでは「世襲と政治家の問題も取り上げ、「信 長には世襲はなかった。学者や作家の世界にも世襲などありえない。世襲政治家とい うのは恥ずかしいものなのだ。世間知に乏しい人物が世襲で政治家になるのは大変怖 いことだ」とこもごも厳しく語っている。
だが、そこから十ぺージほどめくると、先の衆院選で当選した“恥ずかしい”とい われる二世、三世議員が四人、顔を並べ「オレ達で政権を獲る」と大気炎を上げてい る。
石原伸晃、河野太郎、塩崎恭久、渡辺喜美氏ら「自民党の明日を創る会」を結成し た面々で、現執行部を公然と罵倒、「もはや賞味期限の切れた連中は相手にしない。 オレ達から総理を出そう。もうルビコン川を渡った…」と威勢のいい声を続ける。四 人はガッツポーズをとって同誌の表紙を飾るが、いまやテレビや週刊誌でも売れ筋の “情報商品”になっている。
下町商店街の老舗の若ダンナ衆ならいざ知らず、さして三バン(地盤、看板、鞄) の苦労もなく、世襲という特典の椅子に座ってパフォーマンスを繰り返す姿には、い ささか苦々しさを感じてしまう。しかも世襲の極め付け、田中真紀子氏を総理に擁立 …などと公言されると、「日本を世襲国家にするのか」とつい鼻白(はなじろ)むの だ。
松下幸之助氏も「世襲はあきまへん。成功は自分だけの力で獲得せねば本物ではあ りまへん」と言っている。大言壮語も若さの特権だが、空疎なラッパの響きより、具 体的な政策、連立政権への展望、さらには派閥を離脱して党内改革に乗り出す決意の ほどを、聞かせてもらいたい。
(山本栄一・ジャーナリスト)