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(2000年2月8日付)
新潟県で悲惨な監禁事件が発覚した。平成二年、三条市で誘拐された十歳の少女 が、五十キロ離れた柏崎市の民家の一室に、九年間も監禁されていたというものだ。 加害者とみられる三十七歳の男は、精神状態が不安定で入院しており、警察の調べも 七日現在、まだ進展はない。
さて問題はここからである。三日発売された『週刊文春』(二月十日号)は、この 段階で男の顔のグラビア写真とともに、実名入りの記事を掲載したのである。同誌の 広告の取り扱いについて朝日、読売などの全国紙は男の目の部分に線を入れて特定で きないように配慮。またJR、営団地下鉄、各私鉄でも車内の中づり広告で男の目を 隠す措置をとり、それぞれ再印刷やフェルトペンによる手作業など、対策に大わらわ だった。
『週刊文春』の松井清人編集長は「長期にわたる悪質な犯罪で、男の精神状態が一 貫して罪に問えない状態にあったとは考えられない」と強調。一方、JR東日本など は「男性は犯人と特定されたわけでなく、逮捕もされていない。精神病棟に収容中で 人権上の配慮もある」と主張する。どちらの論理に正当性があるかに注目したい。
新聞社やPR企業による広告掲載基準、規定は、人権や関連法規を守り健全な社会 秩序のためにも必要なことはいうまでもない。基本的なルールでもある。それを一編 集長の「悪質犯罪だから遠慮はない」という審問官気取りの思い上がりは容認できる ものだろうか。
捜索の進展により男性の立場の変化は当然ありうるが、この捜査過程での独善的な 専横さはとうてい許されまい。必ずエスカレートする。せめて防波堤となった鉄道各 社の良識を評価したいが、文春には迷惑料支払いの意思ありや? (山本栄一・ジャーナリスト)