

(1998年12月26日付)
今年は暗いニュースばかりがつづいた一年だった。この一年をしめくくる今週の週刊誌も、暗い話題ばかりだったが、そのなかでただ一つ、暗やみで光明を見る思いがした記事があった。『週刊読売』の「景気回復?/カネが動き始めた」という記事である。
大手スーパーが「五%還元セール」「全品七%還元セール」などで、「売り上げ五割増」を達成したことは周知のことだが、この記事を読むと、それが例外ではないことがわかって、少しは明るい気分にさせられる。
たとえば、沈滞する自動車産業でも軽自動車だけは好調な売れ行きで、前年同期の二倍以上にあたる約十六万台が生産された。なかには生産が間に合わず、社員が休日も出勤して対応している工場もあるほどだ。
住宅産業にも、火がつきつつある。住宅金融公庫の金利が緊急経済対策の一つとして、十一月から年二%にまで下げられたことや、住宅ローン残高に応じて、所得税が最長十五年間控除されることなどが引き金になっているとみられる。年明け以降は、さらに大型需要が見込まれているという。
家電業界も好調で、家電製品の販売額は四月以降七カ月連続で前年同期を上回り、十月には最高の前年同期の一三・六%増を記録した。とくに、安くて良い製品、ひと味違う商品の前には列ができるほどだという。
もちろん、悲観論が聞こえてこないわけではないが、景気好転の兆しが見えてきたのも確かだろう。この記事を書いた記者は、次のような率直な感想を述べている。「『胎動』は聞こえてはいるものの、まだまだ非常に弱く、“流産”の危険性すらあるのが実情かもしれない。だが、決して“想像妊娠”ではない、と思いたい」
記事は記者が書き、記者が責任をもつものだ。その姿勢があるからこそ、この記事は読者にさわやかな印象を与えるのだ。記者の思いに同感する読者も少なくないはずである。
(玉木明・評論家)