

(1998年12月19日付)
出版、ジャーナリズム業界も、不況の嵐にみまわれている。本や雑誌の売れ行きが落ち込み、広告収入も激減しているからだ。台所事情が苦しいのは、どこも同じだろう。折しも、『アエラ』が「マガジンハウス『雑誌王国』の挫折」を伝えている。
マガジンハウスといえば、『平凡パンチ』という週刊誌を思い浮かべる人も少なくないだろう。長い間、若者たちの心をとらえてきた雑誌だった。その後も、『クロワッサン』『an・an』などのヒット雑誌を創刊して、一時代を築いてきた。
何よりも自由を重んじ、独創性を大切にしてきた雑誌社で、マガジンハウスの編集者といえば、羨ましがられる存在だった。記事は次のような挿話を紹介している。
「驚くべきことに、みんなでワイワイやって面白い話が出れば即取材といった感じで、企画会議もやらない。数字を気にしていてはいいものはつくれないと、実売部数を知っているのは幹部だけ。/部員たちは自分たちの雑誌がいくら売れているのかさえわからない、などといった編集部も珍しくない」
しかしながら、最近はそのメチャクチャさが影をひそめ、「与えられた仕事を無難にこなすだけの人間が増えた」のだという。売れ行きが落ちて会社全体が赤字に転落した一因もそのへんにあるのかもしれない。
唯一、部数を伸ばしているのは、『ブルータス』だという。「どうせダメなものはダメ。こうなったらやりたいようにやろう」と開き直ったのがよかったらしい。
編集長は「この企画は売れないかもしれないけど、俺がやりたいからやる」のだと編集部員を説得したという。案外、こんなところに雑誌づくりの原点があるのかもしれない。週刊誌の記者たちも、売れそうな記事より、自分のやりたい記事、書きたい記事を書くべきなのだ。むしろ、そのほうが売れるかもしれない。週刊誌も大きく変わるはずだ。
(玉木明・評論家)