

(1998年11月21日付)
週刊誌は、世相を映す鏡である。裏を返せば、その世相の移り変わりを的確にとらえた記事が求められているということだ。その意味でいえば、『SPA!』の「ボクら『仕事激増サラリーマン』/毎日が限界」は、まさにいまの深刻な世相を伝えていて、ひときわ目を引く記事だった。
不景気で企業は軒並み売り上げが落ちているというのに、なぜ仕事がそんなに増えるのか。理由は簡単である、新規採用の見送り、リストラ、出向などの人員削減の結果、社員一人あたりの仕事量が相対的に増えているからだ。それでも「仕事があるだけマシかもしれない」と、その激務に黙って耐えているサラリーマンがいかに多いことか。
この記事で紹介されている通信業界に勤める男性社員(二十八歳)の場合は、残業は少なくても週二十時間、多いときは四十時間、帰宅は深夜の三時か四時、へたすれば五時になる。昼食や夕食にさく時間も十分程度にけずり、仕事に猛進せざるをえないという。
「よりよい将来のために今を犠牲にしていると思えばね。でも、僕の場合、小学校の時は開成中学を目指して勉強。中・高は『東大法学部』受験に忙しく、東大時代は一流会社に向けた準備期間。そういう意味では、常に幸せの先送りだったんですけどね」
その「先送り」された「幸せ」が、はたして彼に訪れるのかどうか。
『週刊読売』の「あなたの息子が“無業者”になる」も、いささかショッキングなリポートだ、「無業者」とは大学には進まず、就職する意思もないまま高校を卒業するものを指す。その割合は、なんと十三人に一人だという。さしずめ彼らは「幸せ」を「先送り」する意思のない若者たちだといっていい。
それだけ若者たちが将来に夢と希望を託せない時代になったということだろう。そのいまの世相をすくいとっているからこそ、これらの記事はそれなりに読めるのだ。
(玉木明・評論家)