

(1998年10月03日付)
週刊誌でも、ときたま編集の冴(さ)えが見られる記事にお目にかかることがある。さしずめ今週の週刊誌から拾えば、『サンデー毎日』の「視点を変えれば元気が見える」という記事があげられるだろう。「ダムはムダ」と題して、建設省が十九のダム事業を休止・中止したことをとり上げている。
十数年前から渓流釣りのとりこになっているので、暇さえあればあちこちの山の中を歩き回っているが、どこの川にいっても、かならずダムがあることには驚かされる。問題なのは、そのダムのおかげで、下流の川が完全に死んでしまっていることである。
地元の人に聞くと「ダムができる前は、魚がたくさんいたのに、いまはその姿も見えない」という返事がかならず返ってくる。それもそのはず、水が流れているならまだしも、夏場ともなると、川底まで干上がってしまって、魚どころではないのだ。地元住民の心まで干上がっているように見うけられる。結局、魚のいる生きた川に出合うには、ダムよりも上流に行くしかない。
どうしても必要なら、それも仕方がないともいえるが、公共事業の名目に隠れて利権がらみの思惑だけが優先されるようでは、何のためのダム建設かわからない。
この記事によれば、建設省が建設中止を決めた背景には、「水需要の減少」があるという。今は規制緩和で電力会社の買電ビジネスがやりやすくなり、“電力余剰”の時代になっているというのだ。そうであるなら、もっとはやく規制緩和をやっていれば、これほど多くの川を死なせないですんだはずだ。死んだ川は、まさに政治・行政の貧困を象徴しているといえよう。
なにごとによらず、今は「視点を変え」て見ることが必要な時代だ。週刊誌も“これ見よがし”の記事づくりを見直し、そうすれば、おのずと「元気印」が見えてくるにちがいない。
(玉木明・評論家)