

(1998年8月29日付)
一つの事実からは、さまざまな推測が成り立つ、そのこと自体は非難されることではないが、その推測のうえにさらに推測が積み重なると、とんでもないことになりかねない。が、週刊誌にはそのての記事が多いのだ。
今週の週刊誌から拾い出せば、『週刊現代』の「『超異常気象―/9月の日本列島はこう狂う!/次はモンスター台風襲来だ」という記事が、そのいい例だろう。
今年の夏の異常気象は、いまさらいわれるまでもないことである。梅雨前線がいつまでも消えずに停滞しているからだ。南の太平洋高気圧の勢力が例年にくらべ弱く、逆に北の寒気団の勢力が強いのが原因だ。ここまでは科学的データにもとづいた事実の範囲だから、誰でもが納得できる話だ。
『週刊現代』の記事はその事実から、この九月に「中心気圧が九〇〇ヘクトパスカル以下の巨大台風が日本を襲う可能性がある」という恐ろしげな予測を立てている。強い北の寒気団が南下すると、南の温かい空気が入れ替わるように北上し、猛烈な気流の渦巻きが起きて、巨大台風が発生するというのだ。
一見、科学的な説明で、理路整然としているようにみえるが、それがミソなのだ。これはあくまでも、「北の寒気団が南下したら」という仮定のうえでの話。南下しない場合もありうる。仮に、南下したとしても、その速度、勢力の強弱によって、事態は大幅にちがってくるだろう。台風が発生しない場合もありうる。要するに、予測が予測になっていないのだ。これは仮定法をうまく利用した一種のペテン、論理のごまかしなのだ。
それはことさらに読者の恐怖をあおりたて、一部でも多く売りたいという週刊誌のいつもの手だろうが、これで売れると思っているところがおかしいのだ。いまどきそのようなみえみえのペテンにかかる読者がいるとも思えない。週刊誌のマンネリ化も、そうとう重症だということだろう。
(玉木明・評論家)