

(1998年8月8日付)
もともと夫婦の離婚などは当事者だけの問題で、人前で話すようなことではないし、また他人が口を挟むようなことでもない。が、芸能人ともなると、好奇心の塊のようなマスコミがわんさと押しかける。そして、芸能人のほうも、積極的にしろ、消極的にしろ、何らかの対応をせざるをえない。
もちろん、ノーコメントでもいっこうにかまわないのだが、そうするにはよほどの覚悟が必要なのかもしれない。いままでノーコメントで押し通した人はきわめて稀(まれ)なのだ。
その点で感心したのは、俳優の三田村邦彦である。妻の中山麻理が破局の真相を洗いざらいマスコミにぶちまけ、夫を悪しざまにいいつのってきたが、当の三田村はひたすら沈黙を守りつづけてきた。なかなか気骨のある対応で好感がもてたが、その三田村もついにマスコミの軍門に下ったようだ。
『週刊文春』に「僕を絶句させた中山麻理/決定的発言」という四竄ノわたる三田村のインタビュー記事が載っている。内容のショッキングさもさることながら、これがマスコミに対しての三田村のはじめての発言だけに、その商品価値も高いはずだ。『週刊文春』の狙いもそこにある。すでに、テレビのモーニングショーなどがこの記事を取り上げていたが、話題になればなるほど、『週刊文春』は売れるというわけなのだ。
おそらく、他の週刊誌も次号に中山の反論を掲載しようと、いまごろは必死にかけずりまわっているにちがいない。こうなると、夫婦がマスコミを舞台に泥仕合を演じる(演じさせられる)という、なんともおぞましい構図ができあがる。それを見て喜んでいる観客も、またしかりだろう。
三田村は記事のなかで、「もうこの件でマスコミに話すことはないと思います」といっているが、それにこしたことはない。なにもマスコミに、これ以上サービスする必要はないのだ。
(玉木明・評論家)