

(1998年4月25日付)
将来に不安があれば、庶民は財布のヒモをかたく閉めて、防御体制をとることになる。商品を売るほうは価格を下げてそれに対応するが、それでも商品は売れない。その状況が進むと、深刻な経済不況に陥る。それがデフレといわれる現象である。
『週刊朝日』の「戦後最大級/デフレの襲来」という記事は、「昭和恐慌が再現するかのような大デフレ」の可能性があるという不吉な予測をたてている。また、『週刊読売』の「日本経済が大崩壊する」という記事も、このままだと「株の暴落、ゼネコンの連鎖倒産」が起きて、目もあてられない状況になると警告している。
危機感をあおりたてて、一部でも多く売ろうというのが週刊誌のいつもの手だが、今度だけは、そうもいっていられない。
いずれの記事もそれなりの現実感が感じられるからこそ、いっそう不吉なのだ。
このような事態を目の前にして、橋本政権はこれといった有効な政策を打ち出せないでいる。それがさらに庶民の危機感を増大させているのだ。すでに政界ではポスト橋本が話題になっているようだが、総理の首をすげ替えたくらいで事態が好転するとは思えない。与党内が権力闘争にうつつをぬかしている間にも、企業の倒産があいつぎ、失業者が巷間(こうかん)にあふれることになるだろう。
『サンデー毎日』の「さびれ熱海をゆく」という記事は、東京の奥座敷として繁盛し、不夜城を誇っていた熱海の無残な姿を伝えている。熱海を象徴する「お宮の松」前に建ち並ぶホテルや旅館のなかには、櫛(くし)の歯が欠けたように静まりかえった建物がまじっている。いずれも倒産・廃業に追い込まれたホテルや旅館だという。まさに不況下の日本の姿を象徴する光景だといえよう。
橋本政権、政府与党の責任はかぎりなく大きい。そのような与党に政権を委(ゆだ)ねた私たちの責任もしかりである。
(玉木明・評論家)