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連載コラム
「週刊誌ウォッチ・ドッグ」

週刊誌ウォッチ・ドッグ

【3】



芸能スキャンダルの一側面

“騙し騙されつつ”の共生関係も

(1998年1月24日付)



 週刊誌の売り物の一つが、俗にいう“スキャンダル”。ときには、あまりのえげつなさに目を覆いたくなるが、その週刊誌の横暴ぶりだけに目を奪われていると、大事なことを見落としてしまうことになりかねない。

 今週も『週刊現代』が芸能界の「スキャンダル女」を特集している。その筆頭格に上げられているのが、やはりあの松田聖子。昨年の十二月に亡くなった父親の葬儀を密(ひそ)かにすませていたことがばれ、その理由をあれこれ詮索(せんさく)されているのだ。

 人にはそれぞれの事情があるのだから、葬儀を密かに行おうとオープンに行おうと、誰からも、とやかくいわれる筋合いはないはずだ。

 が、そこが聖子の聖子たる所以(ゆえん)なのだ。どんなにささいなことでもスキャンダラスな味付けをされて、根掘り葉掘り、洗いざらい週刊誌に書かれることになる。

 本来なら、プライバシーの侵害で告訴してもいいところだが、彼女はけっしてそうはしない。何を書かれても沈黙を守り、その冷酷な仕打ちにひたすら耐える姿勢を崩さない。そこが彼女のしたたかなところだ。彼女の背後には、よほどの“タレントづくり”の名参謀が控えているにちがいない。

 その方程式を解けば、こういうことだ。週刊誌が「悪妻」「悪女」のレッテルを張るなら、とことんそのレッテルを生き(演じ)てやろう、それがいちばんの得策だというのが彼女の戦略。それが的中して、週刊誌が叩(たた)けば叩くほど、タレントとしての聖子は輝きを増し、熱狂的なファンが彼女を支持してくれる。止めどもなく週刊誌に流れてくるスキャンダル情報も、彼女にしてみれば芸のうち。週刊誌がそのことを知らないはずがない。

 そこには、“騙(だま)し騙されつつ”の共生関係が成り立っているのだ。週刊誌とここまで見事な共生関係を築きえたタレントを、私は聖子のほかに知らない。私も聖子ファンの一人を任じている。

(玉木明・評論家)