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ワシントンDC通信


連載コラム
「ワシントンDCの風」
辰巳由紀

【12=完】


北朝鮮情勢の今後
6者協議再開、正念場の日本外交

(2003年12月2日付)


 北朝鮮の核疑惑をめぐる6者協議の第2回が今月中旬に北京で開催される見通しが強くなってきた。

 関係国が一堂に会することに意味があった前回と異なり、今回の協議では北朝鮮が求めている安全の保証を、既存の同盟関係にヒビをいれない形で提示することができるか、また、いかに北朝鮮から非核化に関する具体的言質を引き出すことができるかが焦点となる公算が大きい。

 今月の協議の結果、北朝鮮情勢がどの方角に向かって動くかについては、様々な憶測があるものの、イラクの治安情勢が悪化し、ブッシュ政権が批判にさらされる機会が増えている現在では、2度目の協議が思うような成果を挙げることができなかった場合でも、米国が急激に態度を硬化させ、武力行使も辞さないような対応に出る可能性は低いと見るのが妥当な線であろう。

 特に、イランの核疑惑をめぐる米国および欧州主要国の対応と、その後の事態の流れは示唆に富んでいる。イランの核開発プログラムをめぐる疑惑については、米国が強硬な対応でイランに対し、国際原子力機関(IAEA)への全面的情報開示を迫る一方で、英仏独の欧州3カ国の外相が揃ってイランを訪問するなどして、外交的働きかけを行った。

 この硬軟織り交ぜたアプローチが結局は効を奏した形となり、イランはIAEAに対して、求められた情報を全面的に開示し、それと併せてIAEA理事会でイランの核開発計画を強く非難し、再度同様の事態が起こった場合には断固たる対応をするという趣旨の決議が可決され、問題は一応の決着を見た。

 イランへのアプローチが北朝鮮にも即適用できるわけではもちろんないが、譲れない一線を強く主張する米国と、問題解決が図られなかった場合に生じる結果について外交チャンネルを通じて働きかけを行う欧州主要国、という図らずも生じた役割分担が、結果として効を奏した、という点は注目されるべきであると思う。

 日本の場合、拉致問題という深刻な問題を北朝鮮との間に抱えており、6者協議に臨む上での政府としての軸足をどこに置くかは判断が難しい。

 拉致問題に対しこれまで北朝鮮が誠実な対応を取ってきたとは言いがたく、この問題がイラクへの自衛隊派遣とならんで最重要視されていることを鑑みれば米国と同一の立場で、北朝鮮に対しては強硬な路線を維持し、拉致問題を6者協議の場で取り上げるよう各国に積極的に働きかけていくべきであるという議論は当然成り立つ。

 その一方で、6者協議の中核をなす米国が、「全関係国が北朝鮮に対して有する懸念が満足の行く形で解決されない限り、包括的交渉の妥結はない」とかねてより発言してきている以上、拉致問題とその他の問題の間のバランスを見失ってはならない、という議論も可能なのである。

 おりしも日本では、北朝鮮に対して日本単独でも北朝鮮に対し経済制裁を課すことを可能にしようとする動きが活発になってきている。ただ、現実的に考えた場合、経済制裁が実効力を持つためには中国およびロシアの協力を得ることが不可欠であり、それには6者協議の場を通じてどこまで働きかけを行うことができるかが重要な要素になってくる。

 いずれにせよ、日本が単独で北朝鮮に対して切ることができるカードは極めて限られているのが現実であり、日本政府は引き続き、難しい舵取りを迫られることになるであろう。

 (戦略国際問題研究所<CSIS>国際安全保障部研究員)

 たつみ・ゆき 国際基督教大学卒。ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)で修士号取得後、在米日本大使館で専門調査員として勤務。2000年からヘンリー・L・スティムソン・センター研究員として、日本の外交・安全保障政策、北東アジア安全保障、日米安保、米国の北東アジア政策などについて研究した後、2001年から現職。