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(2003年10月7日付)
先月22日、小泉総理の自民党総裁再選を受けて、改造内閣が発足した。自民党内から交代を求める声が強く出ていた竹中金融担当大臣を留任させ、北朝鮮問題やイラク情勢に関する国会での答弁姿勢や、存在感の薄さなどが指摘されていた川口外務大臣についても続投を決め、更には安倍晋三官房副長官を自民党幹事長に抜擢するなど、小泉色が十分に出た人事となった。
米国はこの改造内閣を(1)外交・安全保障問題、(2)経済政策――の二つの視点から、かなり好意的に見ている。特に、川口外相と石破防衛庁長官は、米国の中では安定感のあるカウンターパート(相手方)として信頼されており、この二人の留任については、竹中金融担当大臣の留任と併せて歓迎する声が聞かれる。
ブッシュ政権は現在、イラク、北朝鮮、中東和平、イランの核開発疑惑を巡る対応など、外交・安全保障の面で多くの問題を抱えている。特にイラク情勢に関しては、米国内で政権の対応のまずさ、武力行使に踏み切るまでの情報操作、戦後復興の見通しの甘さなど様々な面において国内で日に日に批判が高まりつつある。
先月も、ウォルフォウィッツ国防副長官が、上院の公聴会において民主、共和両党の議員から情勢判断の甘さについてこれまでになく厳しい追及を受けた。最近では「ネオコンの牙城」と言われるナショナル・ジャーナル誌でもブッシュ政権のイラク政策に対して批判的な記事が掲載され始めるなど、ブッシュ政権はことイラクに関しては国内で厳しい立場に置かれている。
さらに、国連総会演説でイラク復興への支援を呼びかけ、国連総会の場を利用して米独首脳会談を行うなど、イラク復興に参加する国の数を増やす努力を始めたものの、成果は芳しくない。
このようなブッシュ政権にとって、イラクや北朝鮮など大きな外交懸案でブッシュ政権の政策を支持する方針を一貫してとりつづけている小泉総理、さらにその総理の下で実際に防衛と外交の実務に当たってきた防衛庁長官と外相は米国にとって数少ない「盟友」である。その盟友の続投を歓迎しない筈はないのだ。
さらに、ブッシュ政権内部の知日派の中には、小泉改造内閣の顔ぶれは、北朝鮮政策についてもこれまでの厳しい姿勢を貫く意思を表している、と見る向きもある。
拉致議連のメンバーである小池百合子、中川昭一両氏が環境相、経産相としてそれぞれ入閣したこと、特に、拉致問題との絡みで北朝鮮に対しては強硬な発言が多いことで知られている中川議員が、輸出管理の主管官庁である経済産業省の大臣になったことは、静かな注目を集めている。
北朝鮮に対して断固たる姿勢を維持したい米国、特に、不拡散防止イニシアチブ(PSI)などを通じて北朝鮮に対する締め付けをさらに強化していきたい米国にとっては、これも朗報であろう。
このような状況を見ても、外交・安保問題においては、今後とも日米間で緊密な連携が維持されることが予想されるが、経済問題においてはことはそう単純ではない。
確かにブッシュ政権は竹中金融担当相の留任を歓迎している。ただ、「構造改革」を政権の大きな柱の一つに掲げて発足した小泉内閣が、こと経済改革・構造改革の分野においては、この2年間、目立った成果を挙げられていないこと、またそれにより日本経済の停滞が続いていることに対する米政府の苛立ちが着実に募ってきていることも事実である。
竹中金融担当相の留任を米国が歓迎していることは「これで構造改革についても本腰を入れてくれるだろう」という米国の期待の反映にほかならず、経済政策の分野で早い時期に目立った成果が上がらない場合、米国の期待は失望に変わり、それが日本に対する批判として噴出してくる可能性は、徐々に大統領選の色が濃くなりつつある米国の国内情勢を考えると十分にあり得る。
今後、総選挙および、その後を睨みながら、小泉総理はより一層微妙な政権の舵取りを迫られることになるであろう。
たつみ・ゆき 国際基督教大学卒。ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)で修士号取得後、在米日本大使館で専門調査員として勤務。2000年からヘンリー・L・スティムソン・センター研究員として、日本の外交・安全保障政策、北東アジア安全保障、日米安保、米国の北東アジア政策などについて研究した後、2001年から現職。