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(2003年9月2日付)
ここ2カ月くらいの間に米国の対イラク政策に変化の兆しが見えている。「戦闘終結宣言」直後は国連のイラクへの関与に極めて消極的だった米政府であるが、最近は、国際社会の一層の関与を求める声明がブッシュ政権閣僚から相次いでいる。
また、アーミテージ国務副長官は一部の米メディアとのインタビューの中で、米国人司令官という条件付きで、国連主導の多国籍軍をイラクに派遣する案を模索し始めたことを明らかにした。これは、新たな国連安保理決議の付託を受けて多国籍軍が派遣される場合には参加を表明しているインドなどの諸国の要請に配慮したものであると言われている。米国は今後、多国籍軍設置を呼びかける国連安保理決議の成立に向けて外交攻勢を強めることが予想される。
そもそも、ここワシントンではイラク攻撃そのものに対して「時期尚早」「単独行動に過ぎ、リスクが高い」などの批判が存在していた。これらの批判は当初の戦闘が比較的短期間に終結したことにより、一時沈静化したが、戦闘終結宣言発出後も一向に改善されない治安、膨らむ戦費、増えつづける米兵死者数などから、再び国内で米国が実質的には単独で対イラク武力行使に踏み切ったことへの批判が再度浮上してきている。
このことに加え、上下両院の有力議員が党派の枠を超えて、ブッシュ政権の対イラク政策に対して批判的な声を頻繁に挙げるようになったこと、米国経済が停滞を続ける中で大統領選の時期が刻一刻と迫っており、ブッシュ大統領としては「泥沼化したイラクと米国経済」という内憂外患の状態で選挙戦を迎えることはなんとしても避けたいという意思が働いているという点も否めない。
確かに、8月20日のバグダッドの国連現地本部を襲った爆弾テロ事件以降、動揺は広がっている。国連は現在、イラク撤退の意向こそ示していないが、今後もバグダッドで国連現地本部が活動を継続するか否かについては、爆破テロ事件の調査の結果や、関係国の意向などを配慮して決定されることになっており、未知数の部分が多い。
国連が万一、イラクからの撤退を決めた場合には、米英主導軍が現地で行っている治安維持活動の正統性に大きな疑問が付されることは避けられず、米国としては、何らかの妥協を図ることにより国連のイラクへの関与を継続させたいという意向が強く働いていることは当然考えられる。
他方、このようなイラクを巡る最近の動きの中で、日本の存在感がいまひとつ感じられないのは何故だろうか。新たな国連安保理決議一つとっても、日本国内では最大野党の民主党がかなり早い時期から、日本のイラクに対する人員(特に自衛隊)派遣の前提条件としてその必要性を唱えてきており、その空気は米国政府に対しても伝えられていたはずである。にもかかわらず、ここにくるまで米国が外交攻勢を強める気配を見せなかったのは何故だろうか。
これは、世論の動向、自民党総裁選、衆院総選挙の可能性など、様々な国内要因はあるにせよ、なかなか、イラクへの貢献について明確な態度を示さない日本に、表立って不満は口にしていないものの、かなりアメリカが苛立っていることの現れではないだろうか。日本が迅速にイラクへの人的貢献策を表明することを米国は政治的に重要視しており、そのため日本への期待も高い。
だからこそ、現在米政府内でくすぶっている、日本に対する苛立ちが表面化してきていない部分がある。ここで日本がその期待に応えられない場合、日米関係が大きな岐路に立たされることになる可能性が出てくるかもしれない。
たつみ・ゆき 国際基督教大学卒。ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)で修士号取得後、在米日本大使館で専門調査員として勤務。2000年からヘンリー・L・スティムソン・センター研究員として、日本の外交・安全保障政策、北東アジア安全保障、日米安保、米国の北東アジア政策などについて研究した後、2001年から現職。