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(2003年6月3日付)
先月の23日、テキサス州クロフォードのブッシュ大統領が所有する牧場において日米首脳会談が行われた。会談においては安全保障問題から日本経済にいたるまで幅広い議論が行われたが、中でもイラク問題と北朝鮮問題に関するやり取りは大きな関心の的であった。
特に、今回、首脳会談後の共同記者会見の場で、ブッシュ大統領が北朝鮮による日本人拉致の問題について「拉致された日本人全員の消息が明らかになるまで、米国は本問題に関し、日本と同様の立場をとる」「北朝鮮による日本国民の拉致を私は強く非難する」と米国の指導者として初めて、ここまではっきりと言及したことは日本国内で大きな関心を集めた。
この発言の意図はどこにあるのだろう。これまで、ブッシュ政権は、小泉政権を支持したいという観点から、日本に対する表立っての批判は控えてきた経緯がある。
現在、国内改革が思うように進まない中、イラク、北朝鮮などの外交・安保問題で難しい判断を迫られている小泉総理を援護射撃するためにブッシュ大統領が拉致問題について発言したというシナリオも考えられなくはない。
また、上記のような発言は、ブッシュ大統領が就任当初から北朝鮮、特に金正日という指導者に対して抱いている否定的感情を単に反映したものである、という見方もできる。
一つ間違いないことは、米国政府内では、北朝鮮に対する厳しい見方が支配的になり、米政府は北朝鮮に対する圧力を強化する方向で確実に動いているということである。
昨年9月に明らかになった枠組み合意違反、さらにそれに続くプルトニウム再処理の再開、そして米朝中協議の場での「核保有」発言、と一連の北朝鮮の動きを巡り米国の北朝鮮に対する見方は確実に厳しくなってきている。
このような状況の中で、具体的アプローチを巡っては依然として見解の相違が存在するものの、(1)北朝鮮との協議は日中韓(場合によっては露も)を含む多国間枠組みの中で行われるべきである、(2)北朝鮮を巡る問題の解決は、あくまでも包括的に、地域諸国の懸念にも十分な考慮が払われる形で行われるべきである、(3)その際、北朝鮮による核保有をちらつかせての脅しには屈しない、という原則を巡っては米政府内で確実にコンセンサスが形成されつつある。その延長線上にあるのが、米中朝協議であり、先月の米韓首脳会談であり、さらに今回の日米首脳会談であった、と見るのが妥当であろう。
このように米国が、少なくとも原則論においては政府内でコンセンサスを形成しつつある状況の中、日本も今後、政府一丸となっての北朝鮮政策の形成を推し進めなくてはならない。
特に、現在、北朝鮮問題というと首相官邸と外務省のみが注目を集めがちであるが、万が一の事態が発生した場合に、対応の矢面に立たされる防衛庁、国内の治安安定に不可欠の警察庁、さらには法務省や経済産業省もきちんと議論に組み込んだ上で文字通り包括的な北朝鮮政策を形成していくことが求められる。
たつみ・ゆき 国際基督教大学卒。ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)で修士号取得後、在米日本大使館で専門調査員として勤務。2000年からヘンリー・L・スティムソン・センター研究員として、日本の外交・安全保障政策、北東アジア安全保障、日米安保、米国の北東アジア政策などについて研究した後、2001年から現職。