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ワシントンDC通信


連載コラム
「ワシントンDCの風」
辰巳由紀

【5】


米中朝協議の結末から考えたこと
岐路に立つ日本の北朝鮮政策

(2003年4月29日付)


 北京で開催されていた北朝鮮の核疑惑をめぐる米中朝3者協議は予定よりも一日早く4月24日に終了した模様である。

 交渉筋からの情報として、協議中に北朝鮮が核兵器開発プログラムを保有している旨を示唆すると共に、米国に対して「何とかしてみろ(do something about it)」という挑発的な発言を行ったという報道も出ている。

 そもそも、この協議は、米国との直接協議を強く主張する北朝鮮側と、2国間協議を避けたい米国が、中国が協議の場に同席するという体裁を保つことで折り合いをつける形で、半ば見切り発車のような形で開催されたものだ。この協議を契機に、事態を打開する糸口が掴めるのか否かさえも不明確であった。

 24日、パウエル国務長官は、「協議は終わりに近づいている」とした上で、「米国は北朝鮮からの強硬な発言に怯えることはない」と述べた。

 米国は、次に北朝鮮と協議を行う際には日本と韓国が協議に加わることを強く希望しているとされているが、次回協議開催に関する具体的事項は何も決まらないまま、北京での協議は終了したことになる。

 このような状況の中、日本は今後、北朝鮮政策を、いかに形成していくべきであろうか。

 日本は、北朝鮮に対しては、核兵器をはじめとする大量破壊兵器やミサイルなど、安全保障上の懸念の他に、拉致問題という非常に対応が難しい問題を抱えている。米国は、安全保障の問題が除去されれば、北朝鮮との関係においては、2国間関係改善を図る上でのハードルはクリアされるが、日本にとっては、ことはそう単純ではない。

 日本政府にとっては、北朝鮮政策を考える上で核兵器やミサイルといった明示的な安全保障上の問題と、拉致問題という、同じ安全保障上の脅威であっても人道問題の色彩が濃い外交上の問題のバランスを取る政策を、いかに形成するかが引き続き課題となる。核・ミサイルの問題を北朝鮮と協議しようにも、拉致問題を半ば人質に取られた格好である日本政府にとっては、先の見通しは厳しい。

 北朝鮮政策を考えるに当たり、今後、我々が注意すべきことは何だろうか。最も重要なことは、実際の交渉にあたる政府関係者の手足を縛らないことである。

 経済制裁緩和から軍事行動まで、アメとムチ両方の様々なカードを北朝鮮に対して持っている米国に比べ、日本が北朝鮮に対して交渉の中で切ることができるカードは経済支援しかないのが実情である。

 拉致問題の解決を日本が北朝鮮に対して今後も強く求めていくことは当然であるとしても、その時々の状況に応じて柔軟なアプローチを日本政府が取りえるような環境を国内で形成していくことが、むしろ問題解決への近道ではないだろうか。


 たつみ・ゆき 国際基督教大学卒。ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)で修士号取得後、在米日本大使館で専門調査員として勤務。2000年からヘンリー・L・スティムソン・センター研究員として、日本の外交・安全保障政策、北東アジア安全保障、日米安保、米国の北東アジア政策などについて研究した後、2001年から現職。