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ワシントンDC通信


連載コラム
「ワシントンDCの風」
辰巳由紀

【2】


興味深い『紛争後イラクへの行動戦略』報告
日本は“顔の見えない支援”から脱却を

(2003年2月4日付)


 1月28日に行われた一般教書演説において、ブッシュ大統領は「フセインは最後のチャンスを失った」と主張、国連のお墨付きなしでも軍事行動に出る意図をブッシュ政権は有していることをアピールした。

 パウエル国務長官が2月5日に予定される会合において安保理理事国に対してイラクが大量破壊兵器プログラムを依然として継続していることを示す証拠を提示する予定になっているとはいえ、対イラク軍事攻撃が開始される可能性がますます濃くなってきたことは否定できない。

 しかし、軍事作戦が終了した後のイラクの復興についてはこれまでほとんど議論が行われてこなかった。1月上旬にCSIS(戦略国際問題研究所)が発行した「より賢明な和平:紛争後のイラクのための行動戦略」という題名の報告書は、「紛争後のイラク」というこれまで触れられてこなかった問題に取り組んだものである。

 この報告書の中では、(1)米国がイラクと戦争に突入する場合、平和を勝ち取ることが極めて重要である、(2)紛争後に実効性のある復興活動を開始するためには、軍事活動を開始する以前から準備をする必要がある、(3)にもかかわらず、現在の状況はとても紛争後にイラクにおいて直ちに復興支援を開始できる状態ではない、という前提に基づき、米政府及び国連が、紛争開始前にイラク復興に向けた準備を始めることが極めて重要である点を強調し、具体的な行動計画を提案している。

 報告書の中で提案されているのは(1)多国籍治安部隊の設置、(2)大量破壊兵器撤廃に向けた包括的計画の起案、(3)イラク国内の平和と安定及び地域の安定に必要な任務のための計画策定と要員の訓練、(4)多国籍暫定統治機構の設置、(5)イラク国内における対話プロセスを推進するための調整官の任命及び計画策定作業の開始、(6)迅速な派遣が可能な国際法専門家、判事、検事、弁護士、公開情報専門家等の特定、(7)文民警察官の派遣、(8)債務救済会議開催の呼びかけ及びイラクに対する過去の戦争関連補償問題の見直し、(9)対イラク制裁の見直しの即時開始、(10)イラク復興支援国会議の開催、の10項目である。

 いずれも、多国間の連携のみならず、官民(特にNGO<非政府組織>)との緊密な連携が成功には欠かせないものばかりである。

 日本では現在、イラク関連支援の内容が検討されているが、例えば、イラク復興にかかる費用という問題についても政府や非政府団体から日本独自のデータは出されていない。

 復興支援の内容についても、自衛隊派遣の是非を巡る議論が突出して注目を集め、何のためのイラク復興支援なのか、日本が復興支援において果たすことができる役割は何なのか、日本はどのような復興策が望ましいと考えているのか、といったより根本的な議論が深くされていないような印象を受ける。

 実際に戦闘が始まった場合に戦闘部隊を派遣できない日本は、独、仏等に比較すると自国の立場を明確にしにくい、という指摘もある。しかし、日本は他国と肩を並べて戦闘に参加できないことで必要以上に遠慮しすぎてはいないだろうか。むしろ、戦闘に参加しないことにより、復興支援において枠に囚われることなく活動できるという考え方はできないだろうか。

 イラク情勢は戦闘が終了すれば即、平和と安定が訪れるほど単純ではない。戦闘終了後にいかなる復興支援が行われるかによって、この地域の安定が決まると言っても過言ではないだろう。復興支援をイラク情勢における日本の貢献策の目玉の一つに据える意図があるのであれば、日本は今の段階から対イラク復興支援のヴィジョンを積極的に国際社会に向けて発信し、復興支援パッケージ策定のプロセスに積極的にかかわっていくべきである。

 (戦略国際問題研究所<CSIS>国際安全保障部研究員)

 たつみ・ゆき 国際基督教大学卒。ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)で修士号取得後、在米日本大使館で専門調査員として勤務。2000年からヘンリー・L・スティムソン・センター研究員として、日本の外交・安全保障政策、北東アジア安全保障、日米安保、米国の北東アジア政策などについて研究した後、2001年から現職。