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(2001年9月4日付)
議会が夏休みをとり、静寂なワシントンDCに大きなニュースが舞い込んだ。8月22日、共和党保守派で前上院外交委員長のジェシー・ヘルムズ上院議員が、地元のノースカロライナで、2002年の次期選挙に出馬しないという引退表明を行った。このニュースをきっかけに、来月ブッシュ大統領が国連総会で演説をすることもあり、アメリカと国連の関係が、メディアを賑わすことになった。
国連の役割を重視している日本に住んでいると、あまり想像できないのだが、アメリカにおける国連の扱いの低さは、国連本部がニューヨークに存在することを考えると、不思議なほどである。それは、特にワシントンの議会、特に保守派の国連嫌いと密接に関係しているわけだが、その象徴的人物こそが、ヘルムズ上院議員なのである。
国連に限らずヘルムズ氏は、共産主義や妊娠中絶などにはもちろんのこと、黒人指導者キング牧師の誕生日の祝日化や日系アメリカ人の戦時中の強制収容の補償など、リベラルで進歩的な政策にはことごとくノーをつきつけることから、映画007シリーズの悪役「ドクター・ノー」をもじって、「セネター(上院議員)・ノー」の異名を持つ。
目下のところ、アメリカと国連の対立点はその巨額の分担金滞納である。ヘルムズ氏は、1996年、世界中で読まれている外交専門紙「フォーリン・アフェアーズ」に寄稿し、国連が非効率で巨大な官僚組識の改革に取り組まない限り、アメリカは分担金を払わないという明確なメッセージを送った。
昨年の1月には、ヘルムズ議員は上院外交委員長として国連安全保障理事会で演説し、「米国の分担は義援金ではなく見返りを期待した投資であり、米国民は国連の米国に対する感謝が足りないと苛立っている」といった演説をして、各国の批判を浴びた。
そのような国連の強力な敵が引退を表明したわけだから、これでアメリカは滞納金の支払いに一歩進んだのかというと、事態はそう単純ではない。
実のところ、国連の滞納金を巡っては、今年の1月にヘルムズ上院議員と民主党のバイデン上院議員(現外交委員長)の提案により、負担額を実質的に減らすという交換条件の下に、5億8200万ドルの滞納金を支払うという法案が、上院で可決しているのである。
しかし、その1月に誕生したブッシュ政権が一国主義的な傾向を強め、しかも悪いことに5月には国連人権委員会の議席をアメリカが失ったことに下院が反発をして、滞納の支払いの凍結を予算案に盛り込んで可決してしまい、分担金は現在のところ未納のままである。
したがって、クリントン政権の国連代表部の上級アドバイザーを務めたスザンヌ・ノッセル氏は、ワシントンポスト紙上で、ヘルムズ氏の最後の闘いは自ら通した法案を実行し、国連への滞納金を納めて国際社会でのアメリカの信用を回復することであると述べ、ヘルムズ氏への期待を表明しているのである。
ちなみに財政赤字に苦しむ日本は、律義に国連分担金を支払っている。
(戦略国際問題研究所〈CSIS〉研究員)