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ワシントンDC通信


連載コラム
「ワシントンDC通信」
渡部恒雄

【8】


ジェノバ・サミットと米国一国主義の行方
日本は是々非々で対米外交に当たれ

(2001年8月7日付)


 先月22日にジェノバ・サミットが終了したが、サミットにおける世界の関心の一つは、米国のブッシュ政権が推進しているいわゆる一国主義(unilateralism)といわれる環境から防衛までの米国の外交政策の行方であった。

 ▼背景に孤立主義の伝統と国内政治事情

 具体的には、包括的核実験禁止条約(CTBT)の死文化、ミサイル防衛を中心とする新しい戦略に伴う迎撃ミサイル(ABM)制限条約の廃棄や温暖化防止のための京都議定書からの離脱表明、さらには生物兵器禁止条約の検証制度のための議定書の草案の拒否、国連小型武器会議への反発などである。

 このような米国の態度を理解する鍵は、孤立主義的な伝統と米国の国内政治事情との二つである。米国において自国の主権を重んじる態度は、その民主主義の根本でもあり、その外交政策における変わらぬ伝統である。

 例えば、第1次世界大戦後、自国のウィルソン大統領が提唱した国際連盟に、米国は議会の反対により参加できなかったし、最も声高に人権尊重を叫んでいるわりには、国連の人権規約や子どもの権利条約等の国際人権規約に関しても、先進国中最も批准が遅く、批判の対象となっていた。

 また、ブッシュ大統領は、米国を二分する厳しい大統領選挙を、多くの保守派や産業界の支援により勝ち抜いてきた。したがって保守派にアピールするためには、米国の主権尊重で自国の防衛を第1に考える態度が歓迎されるし、企業の利益にマイナスとなる二酸化炭素排出の規制は、ないに越したことはない。

 しかも、今回問題になっている京都議定書は、選挙の宿敵であったゴア副大統領が、議会の反対を圧して強引に進めた経緯があり、共和党政権にとっては、「愛情を抱けない」(アーミテージ国務副長官)代物なのである。

 それでは、このようなブッシュ政権の「一国主義」は今後、相互依存が進む世界の中で国際秩序を破壊していく方向に進むのだろうか。それは、次の2点でありそうにない。

 第1に米国は自国の利益を中心にものを考えるが、もし米国が孤立した場合に失われる国益の大きさは、協調で犠牲にするものよりはるかに大きい。

 ▼上院共和党の少数転落で軌道修正は必至

 また、米国には孤立主義の伝統とともに、ウィルソン大統領以来の国際協調主義の伝統も根強くあり、国内政治の反対勢力が、孤立主義への最大の批判者となることは間違いない。

 現時点でも、すでに、ブッシュ政権の一国主義に対する批判は、民主党の議会を中心に高まっている。

 しかも、ジェフォード議員の突然の共和党からの党籍離脱で、共和党上院が野党に転落したこともあり、今後、議会民主党からのブッシュ政権の外交政策への風当たりは益々強くなっていくだろう。

 逆にいえば、今後のそのような抵抗が予想できるからこそ、現在のうちに、ある程度の政権の成果を示しておこうという戦略があるのかもしれない。景気の下降もあり、今後のブッシュ政権は、国内経済の対応に忙殺されていくことも予想されるからだ。

 日本が気を付けなくてはいけないのは、親日政権だからといってブッシュ政権に単なる追従をしていくと、長期的には、米国の変化に対応できなくなる可能性があることだ。米国に是々非々で対応するための、外交政策の基本の確立が、今ほど急がれるときはない。

 (戦略国際問題研究所〈CSIS〉研究員)