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(2001年7月3日付)
さる6月30日、ワシントン郊外で日米首脳会談が行われた。私がワシントンでこれまで見てきた日米首脳会談の中で、今回ほど、安定感のあるものはなかった。
会談の数日前に、ブッシュ政権にいる友人が、オフレコでアメリカのシンクタンクの日本専門家を集めて、意見交換をした。(私は日本人なのに参加する光栄に与かった)
まずこの席で、ブッシュ政権側の首脳会談への真剣な姿勢と的確な事前準備に感心することになった。その晩、日本大使館の関係者からも米国側に対する好評価を聞き、首脳会談の成功を確信した。
はたして、今回の首脳会談では、小泉、ブッシュ両首脳が個人的な関係を深め、日米が取り組むべき課題に関しても一応の整理がつき、今後、実務レベルで仕事を行うための政府の各レベルでの仕組みが約束され、大きな目標は達せられた。
このような成功の背景は、これまでにない、日米それぞれの政権の利害の一致である。日本の停滞する経済が、世界経済の足をひっぱってきて久しいが、アメリカの景気の先行きに陰りがみえてきた現在、ブッシュ政権の日本の景気回復によせる期待は、いやが上にも高まっている。
アメリカの一般の理解では、これまでの自民党を中心とする政権は、既得権を持つ支持層に縛られ、それを大きく覆すような改革は難しいとされてきた。
しかし、知日派を政権の中枢に配したブッシュ政権は、今回の小泉政権の特殊な成り立ちと国内事情をよく理解し、これを日本の景気回復への千載一遇の機会と考えている。
しかも日本人が小泉政権に対し、80%を超える支持率を与えており、アメリカでは、これをポリティカル・キャピタル(政治資本とでも訳せばいいのだろうか?)と呼び、政権が具体的に政策を実行に移すための大きな底力と見ている。
今回の首脳会談では、京都議定書、日本の集団的自衛権の行使、沖縄の基地問題など、いくつかの重要な議題があったわけだが、やはり、最も中心となるのは経済問題であり、今回の首脳会談の成功は、小泉政権の経済構造改革には追い風となるだろう。
しかしながら日本としては、ブッシュ政権が小泉政権の政策を、無条件で支持をしているわけではないことは、肝に銘じておくべきだ。もし結果として、不況が長期化し、アメリカの産業に深刻な影響を与える事になった際には、産業界の強い影響下にあるブッシュ政権が、黙って我慢できるとは思えない。
したがって、この首脳会談の成果である「成長のための日米経済パートナーシップ」においても、日本の国内市場の規制改革や直接投資促進のための協議が設置され、アメリカの産業界に魅力的なものになっている。このあたりのバランスが、親日政権とはいえ、さすがに共和党政権のしたたかさを感じさせる。
同じように、京都議定書に関して、日本国内では、アメリカ抜きで日本とヨーロッパで批准をとの声があるが、ブッシュ政権の国内事情を考えれば、日本がアメリカ抜きの批准に踏み切ることは今後難しくなるだろう。
ところで、今回の日米首脳会談以降、経済構造改革というテーマは、国内課題であると同時に外交課題となった。小泉政権だけではなく、日本にとって、それが先送りが許されない背水の陣になったということこそが、良くも悪くも、この日米首脳会談の歴史的意義といえるかもしれない。
(戦略国際問題研究所〈CSIS〉研究員)