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(2001年6月5日付)
先月の23日、ふと思い立ち、米国議会上院の外交委員会で、次期駐日大使に指名されたハワード・ベーカー元大統領主席補佐官の公聴会を聞きにいった。 日本の国会と米国の議会の大きな違いは、国家機密やプライバシーに関わる秘密会を除き、本会議、委員会が一般公開されており、空港にあるような金属探知器を通過できれば、面倒な予約手続きなしに、傍聴が自由にできることである。
この公聴会は、実に面白かった。
かつて共和党の上院院内総務(上院共和党のリーダー)を務めていたベーカー氏ということで、大物揃いの上院の外交委員会のメンバーの多くが出席し、(公聴会というのは議決をする場ではないので、メンバーは滅多に顔を揃えない)しかも、上院議員を引退して、現在、バイアグラやペプシ・コーラなどのテレビCMの出演で、マルチに活躍中のボブ・ドール元共和党院内総務までが顔をみせた。
さらに傍聴席には、かつて、カンサス州選出の上院議員を務めていたナンシー・カセボーム・ベーカー夫人が陣取るという華やかな公聴会となった。
このような特別な雰囲気の中、ベーカー氏が、議会において特別の尊敬を受ける存在であるということを、目の当たりにすることとなった。普段は泣く子もだまるこわもてのヘルムズ委員長がベーカー氏には冒頭から敬意を表し、野党の民主党の主要メンバーも、ベーカー氏に終始、敬意を持った態度で接していた。
本来ならば大使候補者に対し、その外交観などを、厳しい質問で徹底的に試す場である公聴会が終始なごやかに進み、しかも、公聴会の当日に本会議で決議するという異例のスピード日程の中、90対0の満場一致で、大使の指名を承認されたのである。
たまたま居合わせた国務省の日本専門家に、「このような和やかでスムーズな公聴会をいままでに見たことがあるか」と尋ねたら、即座に「ない」という返事が返ってきた。
公聴会の席上、ベーカー氏を形容する言葉として頻繁に使われた言葉が、ステーツマンである。これは同じ政治家を意味するポリティシャンと比べて、見識があり立派な政治家という意味がある(日本語でいえば、政治屋と政治家の違いに近い)。
彼がこのように党派を超えて尊敬される事柄の一つが、ウォーターゲート事件に際し、議会の特別調査委員会の副委員長として、同じ共和党のニクソン大統領を追及したときの公正無私な態度である。以来彼は、アメリカ国民の幸福を第一に考えるステーツマンとして、両党から尊敬をうけているのである。
ベーカー氏の政治姿勢を端的に表す彼自身の議会運営の4つの原則がある。(1)異なる意見を尊重せよ(2)できるだけ多くの議員と協議せよ(3)自分が話すよりも多く、人の意見を聞け(4)礼儀正しく振る舞い、他人にもそうするように働きかけよ。
このような、言うは易し、行うは難しの4原則で、米国政界を生き抜いてきたベーカー氏の駐日大使起用は、一部の日本の報道が懸念するような経済面での対日強硬姿勢などの近視眼的な態度よりは、ベーカー氏本人が公聴会で強調していたような大局観を持った日米関係全般のための、強い味方になるのではないだろうか。
(戦略国際問題研究所〈CSIS〉研究員)