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(2001年5月1日付)
先日、下院歳入委員会の貿易小委員会のスタッフをしている旧知の米国人と話す機会があった。最近のキャピタルヒル(米議会)の状況を尋ねたところ、「今はみんな中国に対して相当熱くなっている」という答えが返ってきた。さすがに心配になって、「少しぐらいは冷静な議員もいるだろう?」と聞くと、「かなりの穏健派でも相当頭にきている」ということである。
これは四月一日の米中軍用機接触事件以来、十一日に拘束中だった米軍の乗員が解放され、最大の緊張が一段階した一週間後のことだったので、私も議会における事態の深刻さを実感することになった。私のいるシンクタンク業界というのは、良くも悪くも専門家集団で、外交問題を突き放して見るためか、職場に「熱い人」はほとんどいない。
その後も米中間の緊張は続き、二十四日に米国は、中国側が最も懸念する最新鋭のミサイル防衛の力を持つイージス艦の台湾への売却を見送り、一定の配慮を示した。しかし、ブッシュ大統領が台湾有事の際には米軍の介入も「選択肢の一つ」と明言して、これまでの「戦略的曖昧さ」から一歩踏みこむ発言をし、これに中国が大きく反発をしている。
そこで、アメリカの次の対中政策で焦点になってくるのが貿易政策だ。アメリカ議会は、昨年、中国のWTO(世界貿易機構)入りの支持を可決したばかりだが、中国のWTO加盟までは時間がかかるため、今年も議会は中国からの輸入品の関税を最小限に保つ最恵国待遇の更新をしなければならず、間もなくその時期が近づいている。
上記のように、議会の反中国の雰囲気は最悪であり、中国への牽制の意味で、最恵国待遇の更新には相当の反対票が予想される。冒頭の私の知人はまさにその真っ只中で仕事をしているわけで、「熱い」はずである。
基本的には、アメリカの景気が下向きになる中で、大きな輸出先である中国との貿易を縮小させるような行動は、ビジネス界が許さないため、最恵国待遇が議会で否決されることはないだろう。しかしその代わりに、例えば現在、下院では中国の人権状況の改善がない場合、二〇〇八年のオリンピックの候補地に北京が立候補するのに反対するという決議案が準備されている。
今回の米中の対立を「冷戦の再来か」と考える人達がいるが、上記のような議会の対応一つとっても、冷戦とはだいぶ事情が違っていることがわかる。現在、米中はあまりにも経済的な相互依存関係が強まり、下手に強硬手段をとるようならば、自国にも大きな損害を招きかねない状況にあるのである。
しかし、だからこそ、議会の不満はますます高まっているのかもしれない。このような雰囲気の中、ブッシュ政権内でも穏健派のパウエル国務長官は四月二十六日、議会で証言し、ブッシュ大統領の台湾発言はこれまでの政策の変更ではなく、中国を敵とする気はないというメッセージを送った。
日本ではともすれば、ブッシュ政権や議会の強硬なポーズだけを強調して報道されがちであるが、実際には政府のやれることも議会のやれることも、かなり限られているのである。
(戦略国際問題研究所〈CSIS〉研究員)