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ワシントンDC通信


連載コラム
「ワシントンDC通信」
渡部恒雄

【4】


難しい“関与”と“封じ込め”のバランス
ブッシュ政権の北朝鮮政策

(2001年4月3日付)


 先日、外交問題評議会研究員の古川勝久氏から興味深い電子メールが送られてきた。古川氏は昨年この欄で連載を担当していたので覚えておられる読者も多いかと思う。それは、外交問題評議会が三月二十六日付でブッシュ大統領に送った北朝鮮への政策提言であった。

 ▼外交問題評議会が大統領に提言

 この提言はワシントンだけでなく、東アジア各国の注目を集めており、日本でも広く報道されている。提言では、現在、北朝鮮が電力不足の中で切実に求めている電力供給を早めるために、一九九四年の米朝枠組(わくぐ)み合意を修正して、建設に時間がかかっている軽水炉での原子力発電から、即効性のある代替(だいたい)手段に換えることを示唆しているからである。

 外交問題評議会は次の五つの提言をしている。(1)韓国の金大中大統領の「太陽政策」への評価と支援の重要性(2)北朝鮮の長距離弾道ミサイル開発の検証・査察体制の重視(3)枠組み合意の見直しの可能性(4)米韓安保関係の支持(5)日米韓の政策協議体制の維持。

 外交問題評議会とは、その名の通り外交問題を専門とし、特に米政府の外交政策に強い影響を持つ民間の非営利独立のシンクタンクである。しかしその政府への影響力は「影の政府」と言われるほど大きい。

 ところで、なぜ軽水炉の代替の発電提供が、大きな反響を呼んでいるのか。それはブッシュ政権の北朝鮮への慎重姿勢により、現在中断しているミサイルと核をめぐる米朝交渉を再開するきっかけとして、北朝鮮への発電提供は絶好の機会となるからである。それと同時に、九四年に朝鮮半島での核開発疑惑をめぐり、戦争間際までいった危機的状況を回避し、北朝鮮を国際社会に踏みとどまらせてきた「枠組み合意」を修正してしまうことで、むしろ北朝鮮への縛りを緩くしてしまうのではないかという懸念も関心の一つである。

 ▼本格的な政策調整はこれから

 今後のブッシュ政権の北朝鮮政策は注意深く見守らなくてはいけない。一般には、現在までのブッシュ政権の北朝鮮政策は、南北の劇的な雪解けムードに水を差すような、タカ派的な強硬姿勢と理解されている。ブッシュ大統領は、三月上旬の金大中大統領との会談においても、韓国の「太陽政策」への支持はしたが、北朝鮮への不信をあらわにし、中断されている米朝交渉を再開するのは当分先のことだと語っている。

 共和党はこれまで、クリントン政権は北朝鮮に対し譲歩をしすぎ、相手からは何も得てないとして批判してきたし、実際そうであった。しかし、だからといって、ブッシュ政権がタカ派的な強硬路線をとり続け、朝鮮半島の緊張を増していくのかと考えるのも時期尚早である。

 なぜなら、現在まで北朝鮮の暴発を止め、南北緊張緩和を進めてきた「枠組み合意」を中心とする関与政策に代わる効果的な政策が、現時点では考えられていないのである。例えば、過去にクリントン政権の関与政策を批判してきた共和党議会のタカ派にしても、枠組み合意に代わる政策はあるのかと聞かれると、批判のトーンが一段下がる。

 現実派ほど、政策の選択の幅が少ないことを理解しており、米国の政策選択の幅は、レトリック(言葉づかい)上の対立点よりは小さいというのが実情である。米国はおそらく、よほどの国際環境の変化がない限り関与政策からは逸脱できないだろう。

 ただし、懸念材料としては、肝心の北朝鮮、あるいは韓国でも、このようなブッシュ政権のレトリックとしての強硬路線を必要以上に強く捉えてしまうことである。そのような誤解による過剰反応を避けつつも、北朝鮮に効果的に圧力をかけ譲歩を引き出すための政策調整が、今後のブッシュ政権の大きな課題となろう。

 なにしろ、北朝鮮問題に関し在野のころから活発に研究・提言を続けてきたアーミテージ国務副長官、ケリー国務次官補、国家安全保障会議のグリーン日本・韓国担当部長(上述の古川さんの元同僚)といったブッシュ政権の実動部隊が、政権入りして動きだすのは、やっとこれからなのである。

 (戦略国際問題研究所〈CSIS〉研究員)