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(2001年2月6日付)
一月二十五日に上院予算委員会の公聴会で、グリーンスパン連邦準備制度理事会(FRB)議長が、減税は景気対策という点では時間がかかりすぎて効果は薄いという条件はつけながらも、早期の減税容認の発言を行った。
アメリカ好景気の象徴的存在であり、最近彼に関して出版された本のタイトルで、「マエストロ(巨匠)」とすら呼称されているグリーンスパンが減税を口にしたことで、大型減税をその政権の中心政策に据(す)えるブッシュ政権に大きな追い風を与えることになった。
この数日後、この証言の舞台となった上院予算委員会を、日本からの議会見学の客を案内して訪ねる機会があった。そこには筆者の友人で、米議会で唯一の日本人正式スタッフの中林美恵子さんが、勤続九年目の共和党委員会スタッフとして働いている。
アメリカの委員会スタッフは国家公務員でありながら、それぞれの党に属し、その人員も選挙の結果により増減されるという厳しい環境にある。したがって、スタッフも多くは自分の所属する政党の政策の熱心な支持者となる傾向が強いらしい。
その中林さんから、共和党上院の減税案に関する極めてわかりやすいブリーフィングを受けて、議会共和党からも大型減税への熱心な取り組みがあり、彼らがいかにブッシュ新政権に期待しているかを実感することになった。
昨年、米議会では、将来の政府の財政見通しが大きく黒字に転じることを受けて、十年間で七千九百二十億ドルを減税する法案を可決した。しかし、医療保険改革などの福祉支出を優先させる民主党のクリントン大統領の拒否権にあって葬(ほうむ)られている。その意味では念願の共和党政権ができた現在が絶好の機会である。しかも、極めて僅(わず)かなリードとはいえ、共和党が上下院とも過半数を確保しているのである。
ブッシュ新大統領の選挙運動中からの大きな主張の一つに今後十年間で総額一兆六千億ドルの大型減税を行うというものがある。これは、議会予算局により試算された今後十年で四兆五千六百億ドルの財政黒字という見通しに基づくものであり、基本的には共和党の強い支持層である高額所得者にアピールし、しかも小さな政府という理念に関わる伝統的な政策である。
しかしそれゆえに、民主党の反対を招きやすい課題でもある。民主党としては、高額所得者に有利に働きすぎる一律の大型減税よりも、例えば昨年にゴア副大統領が大統領選で提案したような、大学授業料の所得控除などの、減税対象を絞った小規模な減税を考えているのである。この減税という課題の成否がブッシュ政権の最初の大きな山場となるだろう。
この減税をめぐる共和党・民主党の攻防の主戦場の一つとなるのが、議会の予算委員会である。中林さんによれば、減税法案のような減税のためだけの法律を議会で通すには、さまざまな条件をクリアしなければならず、現在のように民主党の力が強く、圧倒的な賛成が見込めない場合は実現性が低いらしい。
それよりも早道は、その性格上、審議時間が限定され、必ず決議されなくてはならない予算案のなかに、減税に関する内容を盛り込んだほうが現実的であり、だからこそ、議会の予算委員会が大きな役割を果たすということである。これから中林さん達、共和党予算委員会のスタッフは、民主党予算委員会のスタッフたちと、両者が合意できそうな減税案を探りながら折衝(せっしょう)を行っていく。
「最初の百日」というのはフランクリン・ルーズベルト大統領が、このスローガンで、一九三〇年代の不況に対しニューディール政策として次々と打ち出した前例により、アメリカの新政権の成功を占う常套(じょうとう)句になっている。
ブッシュ新政権にとっても、この「最初の百日」は例外なく重要なものである。そして、外交安保閣僚に重量級をそろえた布陣から、「内政より外交・安保重視」というイメージを持たれているこの政権にとっても、最初の重要課題は、やはり内政問題なのである。
(戦略国際問題研究所〈CSIS〉研究員)