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(1999年12月7日付)
いったい新聞記者は何歳ぐらいまで現役として活躍できるのだろうか。そんなこと を思わせる事件が『ニューヨーク・タイムズ』で起こった。七十七歳になる名物コラ ムニストのエイブ・ローゼンタール記者がさる十一月五日付で一方的に「解雇」され たからだ。
米新聞社にはいわゆる日本流の定年退職というものがない。年齢差別や男女、人種 により解雇することは法律上禁止されているからだし、コラムニストとして活躍し出 すのはむしろ五十、六十をすぎてからといった傾向が強いためだ。
唯一の正当な「解雇」理由は、その記者にジャーナリストとしての能力にかげりが 見えてきたと経営者が判断した時。ところが、米知識層に根強いファンを持つローゼ ンタール記者にこの理由は当てはまらない。
しかも署名入りで記事を書くということがジャーナリストの本来の仕事だと見る傾 向の強いアメリカでは、コラムニストは編集局長などよりも地位は高い。
そんなこともあってか、「解雇」したタイムズ紙はその日付では社説と特別記事で 同記者の「解雇」を「価値ある希有(けう)な同僚記者との決別」などと褒(ほ)め 上げ、辞め方についてはいっさい触れずじまい。一説によると、ローゼンタール氏と は犬猿の仲だった、もう一人のコラムニスト、M・フランケル記者が経営幹部に「俺 をとるか奴をとるか」と迫った結果が今回の「解雇」につながったらしい。
辞めさせられたローゼンタール記者は「タイムズに愛着がないといったらウソにな る。しかしタイムズだけが新聞ではない。頭がクリアで指先が動かなくなるまで私は コラムを書き続ける」と意気軒高。「捨てる神あれば拾う神あり」。解雇されたその 日に六社からお声が掛かったという。
(高濱賛・在米ジャーナリスト)