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(1999年9月4日付)
「カルト(熱狂信者団体)への断ち切れぬ憤りで日本人は個人の権利を侵害」
八月二十二日付けの『ニューヨーク・タイムズ』紙は一面で、日本各地の市町村がオウ ム真理教信徒と分かる住民票転入届を「地域社会の不安を増大させる」として受理してい ないことや、住民たちの大規模な反オウム・デモ、規制のための特別法制定の動きを取り 上げた。
オウム真理教が「あれ以後」再び息を吹き返しているとの報道は以前にも米雑誌で取り 上げられたことがある。が、オウム反対運動を憲法違反の人権侵害、との視点からとらえ たのは、私が知る限り初めてだ。
この記事をめぐっては直ちに日本研究者たちのインターネット・グループでも活発な議 論が始まっている。
「いくらテロ行為は放棄したといっても、あれだけのことをやった大量殺人集団が自分 の隣に住み出したら、人権侵害などと言っていられるだろうか」「オウムは日弁連に人権 救済を申し立てたというが、オウムけしからん一点張りの日本のマスコミは戦時中の大政 翼賛会新聞を思い出す」と侃々諤々(かんかんがくがく)。
なかには「日本人は第九条だけでなく信教、集会、結社の自由でも憲法違反をやってい るのに気づかない」との鋭い指摘もあった。
くだんのタイムズ記事を書いたのは、旧日本兵による中国人人肉食い疑惑などの報道で なにかと問題を起こしたN・クリストフ記者の後任、カルビン・シムズ記者。一緒に赴任 した同僚のハワード・フレンチ記者とともに米主要記者の東京特派員としては初めてのア フリカ系米国人だ。
社会で差別され、偏見を持たれている人々に対する「正義感」が黒人というバックグラ ウンドからほとばしるものなのかどうか。少なくとも日本の記者たちが横並びで断定して しまっている「盲点」を彼らはとらえようとしていることだけは間違いなさそうだ。
(高濱賛・在米ジャーナリスト)