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連載コラム
「米国メディア時評」

米国メディア時評

【16】



花形アンカーウーマンのケネディ事故取材拒否

(1999年8月7日付)



 自らの操縦する飛行機の墜落事故で妻、義姉とともに死亡した故ケネディ大統領の一人息子、ジョン二世(38)のニュースは米国民に改めて「悲劇のケネディ家」を思い起こさせた。

 大げさな言い方をすれば、米メディアも日本で言えば「昭和天皇崩御(ほうぎょ)」並みの大々的報道に終始していた。

 ところが米三大テレビネットワークの一つ、ABCの朝ニュースのアンカーウーマン、ダイアナ・ソーヤーさんがこの世紀の事故発生後二日間画面から姿を消してしまうという珍事が起きた。同テレビ局の社長と掛け合ってのこの「職場放棄」に、批判ごうごう。

 『ロサンゼルス・タイムズ』(7月31日付)は「ソーヤー失踪をめぐって論議」とこの背景を解き明かす記事を載せた。

 これによれば、ソーヤーさんはケネディ家とは昔からの昵懇(じっこん)で、とくにジョン二世夫妻とは親せき付き合いの間柄だったという。そんなことからジョン二世夫妻の事故死にショックを受けてとても仕事にならないために職場を離れたというのだ。

 日ごろから高給取りの有名人、アンカーに批判的な連中が黙っているわけもなく、「親しい有名人の死にショックを受けて仕事が手につかずでは客観報道を旨とするジャーナリストとしては失格だ」「有名人となると手当たり次第に親しくなり、なにか彼らに起こると取材すらできない。まさに自己陶酔もいいところだ」と一斉に集中砲火を浴びせた。

 彼女は「個人的な義務を果たさねばならなかったため」と言葉少なに弁明しているが、「これで視聴率が落ちることは明々白々」(テレビ業界関係者)。

 個人的な感情を超えて視聴者にニュースを伝えるアンカーのプロ意識が俎上(そじょう)に載ったといえる。

(高濱賛・在米ジャーナリスト)