

(1999年6月5日付)
日本で「芸能雑誌」というとどこかゴシップ誌といったニュアンスが強い。が、「映画 の都」ハリウッドで発行されている芸能紙となると、ちょっと違う。なにしろハリウッド 映画業界の動向を報道すること自体グローバルなインパクトを与えるからだ。
九十五年の歴史を誇り、向かうところ敵なしだった『ディリー・バラエティ』の発行部 数は、日刊で三万七千九百部、日曜日か月曜日に発行される週刊で三万五千部。部数こそ 、日本の感覚では大したことないのだが、その影響力は「ハリウッドの大スターのギャラ をも変えてしまう」(『ニューヨーク・タイムズ』)という。読者の平均年収は四十五万 ドル(五千四百万円)で、大スターやプロデューサー対象の専門紙であることが一目瞭然だ 。
ところがここ数年間に新参の『ハリウッド・リポーター』が、特ダネに次ぐ、特ダネで じりじりと発行部数を増やし、日刊で二万四千部、毎週火曜発売の週刊で三万五千六十部 と『バラエティ』を追い抜いてしまった。『リポーター』大躍進の要因は、『バラエティ 』の腕っこきの記者や特ダネ記者を次々に引っこ抜いたこと。現在の編集長も『バラエテ ィ』から引っこ抜いた辣腕(らつわん)女性記者だったアニタ・ブッシュさん(37)。
一度入社すると、定年までその新聞社で働く傾向がまだまだ根強い日本とはあまりにも 違いすぎる。が、生き馬の目を抜くようなハリウッド取材合戦の中でライバル紙を打ちの めすにはこれくらいのことは朝飯前のことなのかもしれない。
(高濱賛・在米ジャーナリスト)