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連載コラム
「米国メディア時評」

米国メディア時評

【9】



スキャンダル報道を歯牙にもかけぬピューリッツアー賞

(1999年5月15日付)



 最も優れた報道をした記者に贈られる伝統のピューリッツアー賞が四月に発表された。

 ご存じの通り、同賞は米新聞王・ジョセフ・ピューリッツアーの遺志により創設された もの。当初は八部門だったものが現在では音楽作曲、小説まで含まれ、十二部門にまで広 がっている。それでもそのメーンはやはり新聞の種記事や発掘報道、調査報道部門。

 その中でも特に注目されたのは、アジア経済危機が米国にとって「対岸の火事」ではな く、米市民の日常生活にも甚大な影響を及ぼしていることを精力的な取材と分析力で書き 上げたオレゴン州の地方紙、『オレゴニアン』のリチャード・リード記者の報道だった。

 選考委員の中には「行き過ぎたスキャンダル報道や誤報・ねつ造・盗作記事が多い中で 、人間の生きざまや経済構造をこれほどまでに克明に報道する記者がいることに勇気づけ られた」と称賛する声が相次いだという。

 今年のピューリッツアー賞は、各社が自薦した記事千四百七十七件を十二部門に分かれ た七十七人(ベテラン記者や大学教授らで構成される)の選考委員が三日間かかって精査 、いわば第一次試験だ。ここで選抜された記事がコロンビア大学ジャーナリズム大学院理 事二十二人によって最終審査を受けた。

 日本の新聞協会賞が各新聞社の最高幹部によって選ばれる「業界賞」なのに比べ、ピュ ーリッツアー賞は全くの第三者の大学教授、作家、評論家によって選ばれるところが一つ の権威づけとなっている。

 ちなみにクリントン・スキャンダルをすっぱ抜いたマイケル・アイスコフ記者は歯牙に もかけられなかった。取材方法や動機に邪(よこしま)さがあったからだ。

(高濱賛・在米ジャーナリスト)