

(1999年3月6日付)
『Japan Madein U・S・A』(日本語タイトル『笑われる日本人』)という日英両語本が最近になって米知識人の間で話題になっている。
ニューヨーク在住の日本人十一人が「ニューヨーク・タイムズの東京特派員の日本報道はごく一部の現象をまるで全体の出来事のように取り上げ、日本人についてのステレオタイプなイメージを米読者に植え付けかねない」との趣旨で昨年秋に自費出版した本だ。
やり玉に上がったのは、「日本の夫婦に愛なんていらない」と独白する一人の老婦人の話から「日本の夫婦には愛など存在しない」と断定した記事、「痴漢がのさばる東京の満員電車」という見出しで被害者の女性一人のコメントから「日本では女性の側にも痴漢を受け入れるような受動的な姿勢がある」と決めつけた記事など十点。
名指しで批判された記者は、かつて天安門事件報道でピュリッツァー賞を受賞したこともあるN・クリストフ、S・ウーダン(中国系米人)のオシドリ特派員。
米知識人の論議を聞いていると、「二人とも名文家だが、記事のリードは華やかなわりに中身が薄いことが多い」「日本はなかなか中国報道の要領ではいかないようで、とくに日本語が不得意なためいらだっている」といったネガティブな反応が多い。
「どこにいてもニューヨークとは異なる事象に焦点をあて異なるものを選ぶのが特派員の本性」とクリストフ記者は言っているようだ。が、外国の社会現象をとらえる時、一番重要なのは個々の記者のその社会に対する知識とジャーナリストとしての鋭い洞察力。「異質論」で物事すべて片付けられればこれほど簡単なことはない。
(高濱賛・在米ジャーナリスト)