

(1999年2月20日付)
アメリカ人はいくら慣行といえどもそこに不正義があれば、なんとか変えようと大まじめに取り組む。裁判ともなれば、判事ではなく、素人の陪審(ばいしん)員が真正面からそれに答えを出す。
一月下旬にコネチカット州の連邦地裁が下した判決はまさにその典型といえそうだ。
ことの発端は、地元テレビ局が九四年、看板キャスターだったジャネット・ペッキンポーさん(48)を突然解雇したことにある。その理由は「わが局には女性キャスターが多過ぎる」というもの。局の新方針でこれまでいた男性二人と女性三人のアンカーを二組計四人に削減したため女性としては最年長のジャネットさんが解雇されたというわけだ。日本ならさしずめ泣き寝入りといったところだろうが、ジャネットさんは黙ってはいなかった。
「二組計四人にするという局の方針は仕方ないとして、自分より実績のない男性を首にせず、また自分より未熟な若い女性を解雇しなかったのはなぜか」
ただちに年齢差別、男女差別、さらにセクハラ容疑で局を訴えた。五年がかりの公判を経て今年一月二十四日に出された判決は、解雇が年齢差別との判断はとらなかったものの、女性だからとの理由で解雇された点を憲法違反と判断。史上まれにみる巨額の賠償金、八百三十万レ(約九億七千万円)の支払いを局に命じた。
この判決は「ニュース番組は中年男性と若い女性のカップルが慣行」と安易に考えてきた全米テレビ局に衝撃(しょうげき)を与えた。
「慣行とは人間が作るもの。そして壊すのも人間」
ジャネットさんの勝利宣言に全米の働く女性が拍手喝さいしている。
(高濱賛・在米ジャーナリスト)