Current Directory is http://www.seikyo.org/【Seikyo Media Page】Copyright (C) 1997-2003 by The Seikyo Shimbun.


【米国の識者に聞く−インタビュー2003】


俳優 ジョージ・タケイ氏に聞く

(2003年4月15日付)



「戦時下の狂気」を許すな

日系アメリカ人の戦争体験を語る


 戦火と略奪にあえぐイラク民衆の苦悩は、戦争の悲惨さを改めて見せつけている。第2次大戦中、アメリカ市民でありながら「日系人」というだけで収容と搾取を受けた体験をもつロサンゼルス在住の著名な俳優、ジョージ・タケイ氏に平和社会への思いを聞いた。(聞き手・長岡良幸)


 SGIの平和行事に感銘

 ――昨年9月にアメリカSGI(創価学会インタナショナル)がハワイで開催した平和コンサート・国際会議に出席いただき、ありがとうございました。その折の感想からお聞かせください。

 行事のスケールの大きさに感動、そしてあれほど大勢の、真剣に平和を求める人々がハワイにいらっしゃることに、強い感銘を受けました。平和のために行動するSGIの使命が明確に表れた行事であったと思います。

 私たちの置かれた世界を見るとき、今ほど「平和のために行動すること」の大切さが強調されるべき時はありません。

 収容所に入れたのは“自国民”

 ――第2次大戦中の体験を聞かせてください。少年時代に“日本人収容所”に入りましたね。

 いいえ、“日本人収容所”ではありません。まず、その点を訂正させてください。私たちは当時からアメリカ市民でした。ですから日系アメリカ人が入れられた収容所は“アメリカ人収容所”なのです。

 よく勘違いされるのですが、私たちはアメリカ人でありながら、“日系”というだけの理由で自国・アメリカ合衆国の政府により監禁させられたのです。

 真珠湾攻撃の時、私は4歳で、戦争が終わって収容所から出てきたのは8歳。幼心にも、家族とともに連行された日のことは鮮明に焼き付いています。突然に銃を突きつけられ、仕事も、財産も、家も、将来の夢も、すべて奪われたのですから。

 1年後、私の家族は北カリフォルニアのツールレイク収容所に移動させられました。なぜか?――そこに戦時下の隠れた歴史があります。

 「心の尊厳」を守った両親

 日米開戦の直後、日系アメリカ人の青年男女が、他のアメリカ人と同じように、我が国を守るべく次から次へと兵役登録に行きました。しかし、彼らは「敵性非外国人」という意味の4Cというレッテルを貼られ、従軍を拒否されました。「敵性非外国人」とはどういう意味か。外国人でないならば自国民のはずですが、私たちはそう呼ばれなかったのです。すでに軍隊にいた日系人は武器を取り上げられ、耐え難い屈辱を受けました。

 しかし1年もたつと米軍の人手不足が明らかになり、政府は収容所の中に兵士として使える人々がいることに気づきます。そこで政府は「質問書」によって17歳以上の日系人の忠誠心を測ったのです。

 多くの質問項目がありましたが、政府が関心をもったのは次の二つです。第27項では“あなたは、合衆国を守るために武装しますか”と聞きます。さらに、第28項は一つの文章に二つの質問が含まれています。“あなたは合衆国に忠誠を誓い、日本の天皇への忠誠を断ちますか”――すなわち、この質問に「イエス」と答えると、“私はアメリカに忠誠を誓います”と表明すると同時に“かつて私は天皇に忠誠を誓っていましたが、今はその誓いを進んで放棄します”と告白することになるのです。アメリカで育ち、天皇への忠誠を考えたこともない日系人にとっては侮辱的な、狡猾な質問でした。

 多くの人々が悲痛な思いを飲み込んで「イエス」と答え、アメリカのために戦場へ行って勇敢に戦いました。その一方、“政府は私の財産や自由を奪えても心の尊厳までは奪えない”と毅然として「ノー」と答えた人々もいたのです。私の両親もそうでした。

 二つの質問ともに「ノー」と答えた人々は“ノー・ノー”と呼ばれ、危険分子を隔離する収容所に送られました。それがツールレイクで、三重の有刺鉄線フェンスで囲まれ、見張りの戦車が6台ありました。多いときには1万8千7百人ほどが収容され、半分は私のような子どもでした。

 「9・11」事件後、「テロとの戦争」を掲げてヒステリックになったアメリカが「かつて来た道」を進むのではないかと憂慮しています。

 人間の多様性が“地球号”の強み

 ――戦争が生み出す差別と抑圧、“非人間化”の狂気を象徴する体験です。こうした暴力と紛争の宿命的サイクルを断ち切るために、SGIは人間主義を基調とした教育と文化交流を推進しています。

 私の専門分野でも、エンターテインメントを通じて人々を結び、教育し、哲学を広げています。一例として、私が出演した人気シリーズ「スター・トレック」を挙げてみましょう。

 このSFアドベンチャーの生みの親であるジーン・ロッドベリーは、舞台となる宇宙船「エンタープライズ号」とは、実は“宇宙船地球号”なのだと言いました。異なる経歴、能力、キャラクターをもった乗組員が、互いに補い合いながら共通の試練に立ち向かうのです。その多様性こそが、この宇宙船の強みとなっています。

 この映画が登場したのは1960年代、東西冷戦の厳しい時代でした。そのような中で、このシリーズはイデオロギーや国境を超えた融和のメッセージを発し続けました。物語の主要キャストの一人に、ロシア語のアクセントで話し、ロシアの文化遺産を誇らしく語る人物が登場することをご存じの方もいるでしょう。

 40年後の今、大空の彼方には国際宇宙ステーションがあり、アメリカ人とロシア人の宇宙飛行士が働いています。日本を含め各国が協力し合っています。私たちに平和の哲学と本物の決意があれば、夢が現実となるのです。

 そのためには「教育」が重要です。若者たちが歴史の真実を知らないままでいることが心配です。数年前に韓国のソウルを訪れた際、観光で来ていた日本の高校生が、かつて日本が韓国で行った非道な行為を初めて知り、ショックを受けた姿を目の当たりにしました。

 アメリカでも、輝かしい建国の理想を学び、深い歴史認識をもった民衆がいてこそ、民主主義は健全に働くのです。そうすればハードパワーを使う必要性は減少し、ソフトパワーによる平和構築の希望が見えてくるでしょう。

 いまだ世界は無知と貧困と失望に満ちており、私たちの宇宙船地球号にとっての挑戦は並々ならぬものです。