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【米国の識者に聞く−インタビュー2002】


「生命と環境の尊重センター」事務局長
リチャード・クラグストン博士

(2002年9月17日付)


「環境・開発サミット」―SGIの活躍に感謝
「地球憲章」は世界の連帯の模範


 世界約191カ国から2万人以上が参加して南アフリカ・ヨハネスブルクで開催された「環境・開発サミット」(8月26日〜9月4日)。同サミットに代表団を派遣し、国連NGO(非政府組織)として「地球憲章」の理念の宣揚に活躍したSGI(創価学会インタナショナル)の取り組みに対する評価を、10年前の「リオの地球サミット」以来、同憲章の推進に取り組んできたリチャード・クラグストン博士(「生命と環境の尊重センター」事務局長)に聞いた。(聞き手=長岡良幸)

サミットが提示した「希望」とは

 ――この南アフリカでの「環境・開発サミット」には賛否両論の評価がありますが、博士はどのような希望を見いだされましたか。

 私たちの大きな期待は、このサミットが、「持続可能な開発」の未来図への幅広い視点や総合的な理念、その全体像を確認する機会であってほしいと願ってきました。そして、その骨格となりうる基本理念を「地球憲章」が提供できる、とも確信しています。それは社会的、環境・生態学的、経済的、精神的な視点をすべて含めた理念です。

 1992年にブラジルのリオデジャネイロで行われた「地球サミット」以来、この10年間は、自由貿易が広がるとともに市場競争が激化し、各国政府が競争力の増強を優先するようになりました。サミットが呼びかけた「共生の理念」が、容赦なき「競争の現実」に沈んでしまってきたというのが世界の実情です。

 しかし、混乱や紛争の続く中にあっても、人々は奥底では「持続可能な開発」の未来図を求め続けているのです。そこに、教育を通じて「地球憲章」の理念を深く浸透させることの意義があります。

 その意味で、サミットの議長に就任した南アのムベキ大統領が開会式の演説で「地球憲章」に言及したことは、私たちにとり望外の喜びであり、心から励まされました。

 大統領の演説自体、開発のあるべきビジョンを提示する素晴らしいスピーチでした。その中で大統領が「地球憲章」を、狭量で排他的な考えを乗り越えるために有効な世界の人々の連帯の模範と位置づけたことは、大きな意義があります。今後は、こうした認識が、より広範に定着していくよう努力していかなければなりません。

憲章は抽象論でなく行動倫理

 ――凝縮して言えば、「地球憲章」が発するメッセージとは何でしょうか。

 それは「地球を大切にせずして、人間を大切にすることはできない。また、人間を大切にせずして、地球を大切にすることはできない」ということです。

 私たちが住む環境世界を真に尊重することは、私たちの生命の尊厳を全うすることと密接に結びついているのです。したがって人間同士、また人間と他の生物や自然環境が、ともに前進していかなければ、何一つとして「持続可能な未来」へと進まない。それほど、あらゆる生命の事象は互いに結びついており、密接に関連し、依拠し合っているのです。

 「地球憲章」はこのサミットが必要とする地球的倫理観を提供できる優れた教材であり、その草案過程には無数の人々の労作業が重ねられてきました。そのゆえに、これは単に紙に書かれた抽象理論ではなく、実際に多くの人々の心を打ち、勇気ある行動へと向かわせてきたのです。

南ア大統領がSGI展示を見学

 ――地球憲章の精神は、私たちSGIの生命尊厳の理念とも一致するものです。SGIはそのの草案プロセスや理念の教育・啓発に各国で積極的に取り組んできました。

 私自身、SGIとともに仕事をするようになって4年になります。SGIは「地球憲章」の推進に実質的な貢献をしてこられました。

 今回の「環境開発サミット」においても、SGIは「地球憲章」に世界の人々の注目を集める素晴らしい活躍をしてくださいました。まず、展示会場での「環境展示」は実に見事な出来ばえで、南アのムベキ大統領や政府関係者、各国の来賓も相次ぎ見学に訪れ、「地球憲章」について見識を深めることができました。

 この展示とともにサミットで上映された映画「静かなる革命」(SGIが制作を支援)は、多くの人々に感動を与え、地球の変革への深い示唆を与えています。こうした人々が、将来、重要な役割を果たすことになるでしょう。

 さらに、サミット開幕の日にSGIが共催した教育シンポジウムでは、高等教育にかかわるリーダーやユネスコの高官が有意義な発表を行い、大成功でした。

 「教育の力」の偉大さを再認識させる、これらの行事の推進力となってくださったSGIの皆さまに、心から感謝申し上げます。

池田博士の提言は明快な指標

 ――池田SGI会長がサミットに寄せて発表した新たな「環境提言」について、感想を聞かせてください。

 池田博士の提言は非常に大きな影響力があると思います。

 提言に込められた思想や理念は、「地球憲章イニシアチブ(地球憲章を支援する運動体)」や私の所属する「生命と環境の尊重センター」などの団体が基調としている信条と軌を一にしています。

 また、国連による「持続可能な開発のための教育の10年」制定の提案にも、全面的に賛成します。私たちは「教育」を通じて、より平和で公正な世界を築く必要があります。

 この提言で池田博士は「教育の10年」を実りあるものにするために、「現状を知り、学ぶ」「生き方を見直す」「行動に踏み出す」の3項目を示されています。これは実に明快で、わかりやすく、説得力のある指標です。

 この提言はサミットに対するタイムリーな貢献であるとともに、地球倫理を啓発する池田博士の思想を、サミット後もより多くの人々や団体が学び活用していくことを念願します。


略歴

 Richard M. Clugston

 教育学博士。アメリカ最大の動物愛護団体が地球環境の保護を推進するために設立した「生命と環境の尊重センター」事務局長。また、国際的なネットワーク組織である「地球憲章イニシアチブ」で教育活動を担当するともに、学術誌「地球倫理」「高等教育における持続可能性の国際ジャーナル」の発行・編集人を務める。