(2002年8月20日付)
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2年連続の靖国神社参拝に中国側が反発 |
――今秋に予定していた中国訪問の延期を決めた小泉首相の判断をどう見るか?
今年は日中国交正常化30周年、来年は日中平和友好条約締結25周年を迎えるわけだが、小泉首相が将来に向けて、実質的な日中関係を築いていくための方法を求めていかれることを期待する。もう少し配慮すべきだろう。
小泉首相の訪中延期については、何が最も重要な判断理由であったかは難しいところだ。中国専門家の間にさえ、中国側の指導者継承問題が落ち着くまで首脳会談は見合わせるべきだとの声がある。なぜなら将来にわたる日中関係は、中国における4世代目のリーダーシップ(編集部注=毛沢東世代、ケ小平世代、江沢民世代の3世代と新しく選ばれる世代)にかかわる事柄であるからだ。
ただし、両国間に対話の用意があるならば、靖国神社問題や日程調整などの政府間交渉における議論とは別個のものとして(国交正常化30周年の親善外交に)取り組むべきだ。
私は個人的には、小泉首相の靖国神社参拝に賛成しないことを明確にしたい。と同時に、中国政府が、日本人の歴史理解を「中国政府の歴史観」通りであるよう要求することは不適当であると懸念している。
――昨年も、日本の歴史修正主義者グループの編集による教科書の検定合格を巡って中国側が反発しました。
概して言えば、私は、日本人の歴史問題に関する最近の動きを楽観的に見ている。戦後日本を分断した(保守と革新勢力間の)歴史解釈の対立が、ようやく解消したと考えている。
ほとんどの日本人は、(欧米諸国など)他の帝国主義国家による犯罪が、過去の日本政府の行為を正当化するという考えを否定するでしょう。と同時に、日本が歴史上、特別に犯罪的であり、永久に改悛すべきであるとの考えも否定するでしょう。単純に黒か白かではなく、灰色もあるという賢明な歴史認識が出てきている。
日本人(の大多数)は、歴史修正主義者グループの意見から距離をおいているし、一方で、中国サイドの認識――日本は悪の集団であり、それに代わる見方は中国人に対して侮辱であり無礼であるというような見方からも離れている。
日本と中国の歴史認識は、今度もかけ離れたままだろうし、短期間では問題ともなろう。しかし、同盟関係にある友好国の間にさえも、歴史認識の違いが存在することを忘れてはならない。例えば、英仏はナポレオン時代の歴史認識について大きく隔たっているが、同時に二国は、親しい同盟国でありパートナーだ。
――日中の「信頼醸成」不足は、東アジア全体の安定や安全保障にとってもマイナスであろう。米国から見て、望ましい21世紀の日中関係とは。
米国の最大の利益は、日中間が強固で協力的な関係であることだ。日本と中国には、特に安全保障・防衛政策において、相互不信を引き起こすような状況がある。個人的には、中国の政策は、やや挑発的で透明性に欠けると思う。中国が米国や日本、そしてアジア諸国に不信感を持たせないためにも、米国は、中国に対し透明性が必要であることを説得すべきだ。
また、日本は、安全保障政策よりも経済政策の分野において、より重要な挑戦に取り組む努力が必要であり、それは日本の平和主義的な意向を世界に説得していくことにもつながると考える。
――瀋陽の総領事館事件では、中国側の対応が日本の世論を刺激した。日本の一部には中国に警戒心を抱く声もあります。
(近年、)中国の対日政策は、戦後日本が自らを卑下する度合い次第の「友好」というパラダイム(枠組み)にとらわれてきた。これは将来の関係改善のためには不適当であり、この点について、中国も理解し始めたようである。
しかしながら、将来、競争相手となるであろう日中両国にとって、東アジアは極めて狭い。グローバリゼーションが、隣接する大国である両国にとっての答えを導くだろう。日中両国は、アジアのみに利益を集中するよりは、より広い地域に視野を広げるべきだ。
このような姿勢は、二国間関係だけでなく、例えば、環境破壊、難民、児童労働、エイズ、核拡散、薬物の不法取引、人身売買といったグローバルな問題に取り組むためにも重要だろう。
取材メモ日米・中の信頼醸成を説く気鋭の学者
セルフ氏は、ワシントンDCで「日中関係の第一人者」と目される気鋭の研究者。日米同盟を機軸に、「日米」と「中国」という枠組みで信頼を醸成することが賢明と説く講演や論文が注目を集めている。
現在は、戦間期にフーバー大統領の下で国務長官を務め、また第二次大戦後には国防長官であったヘンリー・スティムソン氏を記念して設立されたNPO(非営利団体)に籍を置き、日本の安全保障政策における信頼醸成措置や日米同盟に関するプロジェクトを担当している。
今回、小泉首相の訪中延期の発表を受けて、東京から電子メールと国際電話でインタビューを依頼し、寄稿が実現した。
略歴 Benjamin Self スタンフォード大学卒、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院で修士号取得。フルブライト奨学金を得て2年間、慶応大学に客員研究員として滞在。1993年から96年にかけては、ウッドロー・ウィルソン国際センターのアジア・プログラム研究員を務めた。共著に、『Japan's Changing China Policy(日本の変わる中国政策)』がある。