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【米国の識者に聞く−インタビュー2002】


ミネアポリス・コミュニティー工科大学
マイケル・クーニ博士

(2002年2月19日付)



大学は平和希求と相互理解の発信源へ



 池田SGI(創価学会インタナショナル)会長が本年の「SGIの日」記念提言で指摘したように、同時多発テロに象徴される「人間不在の病理」の難問に対する模索が、アメリカ社会でも始まっている。伝統的な白人多数地域のミネソタ州で、多国籍の学生を受け入れているミネアポリス・コミュニティー工科大学のマイケル・クーニ博士に、文明間の対話を啓発する同大学の取り組みを聞いた。(ミネアポリス・長岡良幸特派員)

 テロ事件で多国籍の学生が励まし合い

 ――あの同時多発テロ事件に反応して、貴大学では出身国の異なる学生の相互理解と異文化間の対話を推進する動きが自発的に生まれたそうですね。

 はい。「9月11日」から数日間、多くのイスラム系の学生たちが大学に出てこなくなりました。アメリカ人の“敵視”と“報復”の的となることを恐れて、家の外に出られなくなったのです。

 2、3日のうちに、学内で変化が起きました。授業を休んだ学生たちを心配し、学友たちが自発的に電話をかけたり、訪ねたりして、「大丈夫だよ。安心して大学に戻ろう」と励ましたのです。

 それは何か高邁な理論を掲げた組織的行動ではなく、「苦しんでいる友の痛みを共有したい」という同じ人間としての純朴な心情から始まったものです。

 その動きは学外へ、さらに世界へと学生たちの視野を広げ、インターネットによる交信を通してイスラム圏を含む各国の人々から「平和のメッセージ」が続々と寄せられました。

 学生たちは大学のロビーに大きな「世界地図」を張り出し、その周りに各国から寄せられたメッセージを張り出しました。アメリカ各地で罪なきアラブ系やアジア系の人々に怒りの拳を向けるような憎悪犯罪が多発するなかで、この大学が平和希求と癒しの声の発信源になれたことはうれしい。私は学生たちを心から誇りに思います。

 また、多国籍の学生を受け入れ、特に経済力や社会的立場の弱い外国人学生の味方となるよう努力してきた、デイビス学長を先頭とした大学改革の賜とも感じます。

 学長の祖父はハンガリー出身で、ナチスによるユダヤ人迫害を逃れてアメリカに移住し、艱難辛苦を経験されたそうです。

 学長は1997年の就任の折、「私は、この大学のキャンパスを歩くたびに、たくさんの“若き日の祖父”に出会っている思いがする」と述べ、わが大学は、語学の壁、文化の壁、偏見の壁に苦しむ人々の味方となることを宣言したのです。

 “弱者に力を与える教育”に賛同

 ――教育の鑑を見る思いがする、素晴らしいエピソードです。池田SGI会長が創立した創価大学も、「大学は、大学に行けなかった人々のためにこそある」との信念で、民衆に活力を与える教育を志向してきました。

 弱き立場の人に幸福への力を与える教育――まったく賛同します。それこそが教育の目的です。

 私どもの大学は社会の幅広い世代の人々が学ぶコミュニティー・カレッジであり、およそ4割の学生が子育てをしながら仕事と学業の両立に頑張っています。3人に1人はいわゆる低所得世帯から通学しており、大学としても奨学金などの援助の充実に力を注いでいます。

 私が担当した、6人の学生からなる少人数クラスでは、学生の出身国がすべて異なり、5つの母国語と6つの文化的背景をもつ多様な思考がぶつかりあう、実に「ダイナミックな」(笑い)クラスでした。

 今でもよく覚えていますが、最初の授業の日にイスラエル出身のユダヤ人学生とソマリア出身のイスラム教徒の学生との間で激しい議論となり、私は家に帰ってから頭を抱えてしまいました。

 しかし、私の不安は杞憂に終わり、このクラスでの交流は最も印象に残る思い出の一つとなりました。この大学のもつ、自由闊達な雰囲気が、また、現実の社会で生き抜いているというたくましさが、「文化の壁」をも建設的な創造の糧にしてしまうのでしょう。

 大学教育の現実として、これは極端な例ですが、教授が「多文化主義」を講義している教室で、隣り合う机に座った異国の学生同士が会話さえしないような皮肉な状況すらあります。

 大学教育とは「理論」と「現実」を結ぶ橋渡しであるべきだと思います。その意味で、この大学では、世界の現実を背負った学生たちが教師に教えてくれるものも多々あるのです。

 SGI会長たたえ「グローバル人道賞」

 ――貴大学では1月に「ガンジー・キング・イケダ――平和建設の遺産」展を開催されました。社会的・宗教的背景の異なる3人の指導者を紹介する展示をどう評価されますか。

 非常に教育的価値の高い催しでした。次の開催地へ巡回する関係で会期が約1週間であったことが残念です。できれば全学生がじっくり見学できるよう展示を延長してほしいと痛切に思いました。

 アメリカ人学生にとっては、キング博士のことは身近に知っていますが、ガンジーや池田博士については「この展示によって初めて知った」という感謝の声を多く聞きました。

 私としては、この催しを通しSGIを知ったことが大きな収穫でした。池田博士をはじめSGIの皆さんの平和への信念、人間への慈愛の心、周囲の人々への温かな心遣い――人間として共通の価値観を学べたことが大きい経験でした。

 そうしたSGIの人間主義運動の価値をたたえて、デイビス学長から池田博士に「グローバル人道賞」が贈られたことを、心から祝福申し上げます。



略歴 Michael Kuhne
 ミネアポリス・コミュニティー工科大学・英語学科主任。同大学はミネソタ州の主要都市であるミネアポリスの中心街に位置する。同博士は、ミネソタ大学など大学教育の現場を歴任してきた体験から、創価の人間主義教育に賛同を寄せている。