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【米国の識者に聞く−インタビュー2002】


フィリピン共和国エドウィン・バエル在ロサンゼルス総領事

(2002年1月15日付)



池田会長の地球的ヒューマニズムに期待
リサール博士の「人間尊厳」の理想はSGIと一致



 本年初の識者インタビューは、フィリピン共和国のエドウィン・バエル在ロサンゼルス総領事。建国の英雄、ホセ・リサール博士の高貴なる精神を継ぐ「リサールの騎士」の称号をもつ知勇兼備の新世代リーダーとして期待されている。アメリカSGI(創価学会インタナショナル)やアメリカ創価大学との交流をふまえ、SGI運動に対する所感を聞いた。(ロサンゼルス・長岡良幸特派員)

 民衆に活力を与える「教育」

 ――総領事は昨年末のリサール記念行事において、池田SGI会長に「グローバル平和大使賞」を贈られました。リサール博士の理想とSGIの共通点は何でしょうか。

 両者とも、それぞれの時代・社会状況において、社会のより良き変革と平和、人間自身の向上を目指していますが、その要を「教育」においていることが最も大切な共通点です。

 リサール博士の生きた時代のフィリピンはスペインの領有下にあり、フィリピン人はヨーロッパ人に対して「二流市民」として卑下され、そのように考えることを教育され、そのように振る舞うように扱われていました。

 「フィリピン人も同じ人間であり、一人一人が最高に尊厳な存在である」と目覚めさせたのが、リサール博士のヒューマニズムです。その精神的覚醒の光は、ばらばらだったフィリピン人の心を一つに結びました。ゆえに博士は「7000の島々を初めて結んだ人」とうたわれるのです。

 現代にあって、池田会長の地球大のヒューマニズムは、国境を越え異なる人々を「同じ人間としての尊厳」に目覚めさせ、人類を結ぶ活力を持っています。

 9月11日のテロ事件以後、「テロ撲滅」が国際社会の重要課題となっていますが、各国がテロとの戦いのために「戦争の準備をする」ことは根本の解決にはなりません。人類は、対立や紛争を対話で解決できる「平和の文化」を手に入れなければならない。私は池田会長が示される「人間の内面の覚醒」を平和の根本とするヒューマニズムこそ、正しい道であると確信します。

 「実ったマンゴの木は嫉妬される」

 ――リサール博士は、暴力革命を志向せず、言論の力によって民衆に活力を与えましたが、過酷な弾圧と銃殺刑をもって報われました。ガンジーにせよ、キング博士にせよ、民衆運動の指導者にとって迫害は必然のように思われます。

 池田会長もまったく同じです。哲学が正しいから、人間の心を偏狭な束縛から解放し、民衆に力を与える。当然、嫉妬の対象となるのです。

 フィリピンのことわざに「豊かに実るマンゴの木は石を投げられる」と言いますが、実りのないマンゴの木は見向きもされません。人間も、中身の豊かな人には尊敬と同時に恐れと妬みも集まるものです。

 フィリピンでスペインに対する独立の機運が、ついに武器を手にとっての戦いに発展した時、リサール博士は暴力革命への参加を拒否しました。しかし、スペインにとっては、戦闘を指揮するリーダーよりもリサール博士のほうが脅威でした。それは、島々の民族を分離し、対立させてフィリピンを統治してきた政策に対して、リサール博士の「言論の力」こそフィリピンを結束させる原動力であったからです。

 太平洋地域の対話の伝統を生かせ

 ――大学院で「安全保障」を専攻され、ハワイ、ロサンゼルス、オーストラリアの現場を歴任された体験をふまえ、「太平洋地域の平和創出」をどう考えておられますか。

 近年、国連を中心に、従来の「国家の安全保障」に対して「人間の安全保障」という新しい概念が論議されています。これは、「平和・安全とは何か」との思考の基軸を「人間の生活」において考えるもので、「安全保障」に新しい側面を開きました。

 もとより「人間の安全保障」は「国家の安全保障」にとってかわるシステムではありません。しかし、それが提起する価値は大きい。そこには「人間の痛み」に対する視点があるからです。

 フィリピンをはじめ、太平洋地域の多くは、他国による領有を経験してきました。だから、人々の中に「平和の大切さ」「戦争とその結果による痛み」に対する実感がある。

 太平洋の英語名が「パシフィック(平和の)」というように、太平洋地域には「時間をかけた話し合いと納得のプロセス」を重んじる伝統があります。フィリピンも、スペイン領有のはるか以前には、島々の民族を結ぶ“連邦制”がありました。

 争いを収める方途として、経験豊かな年輩者の知恵を尊重する良き伝統が伝えられています。「太平洋地域」は、すでに池田会長が指摘されているように、「武力より対話を!」との平和希求の心を広げることで世界に貢献すべきです。

 人間には「未来を選択する自由」が天賦の才として与えられています。池田会長が発信されている「生命尊厳」の思想こそ、人類が「戦争」ではなく「平和」を選択するための貴重な道標であると、私は尊敬の思いを深くしています。



略歴 Edwin Bael  1952年、フィリピン・タゴロアン生まれ。裁判所調査官、法務行政監察官などを務め、フィリピン大学(行政学)、フィリピン防衛大学(安全保障学)で修士号を取得。将来を嘱望される外交官としてスペイン、ハワイ、ロサンゼルス、オーストラリアの在外公館勤務を経歴し、環太平洋地域の政治・経済・文化交流に造詣(ぞうけい)が深い。2000年8月から在ロサンゼルス総領事を務め、今月末にフィリピンへ帰任の予定。