(2001年4月17日付)
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生命尊厳、精神性、内面革命で民衆を覚醒 |
−−展示の印象はいかがですか。ガンジー、キング博士、池田SGI会長の三人の事績は大きなすそ野の広がりを持っていますが、共通点をどのように見ていますか。
哲学や社会学を専攻する学生ばかりでなく、一般市民にもわかりやすい、大変によくできた展示であると感銘しました。このような形で平和と非暴力のメッセージを社会に発信していく意義は大きいと思います。
「ガンジー・キング・イケダ」の三人の思想と行動には、多くの共通点がありますが、私は特筆すべきこととして「生命尊厳」「精神性」「内面革命」の三点を上げたい。
三人とも民衆を目覚めさせることによって大規模な社会変革の波を起こしていますが、その根底には非暴力思想の基盤となる「生命の絶対的尊厳」の視点が貫かれています。
また、三人の指導力は「精神の力」に由来している。この力は、永遠に消えることはありません。人間が他の動物と違うのは、この精神の力が一切の外的な力に勝ることを証明してみせたことです。
そして、三人の運動論は常に人間の内面の覚醒・変革を先にして、外の浄化を図っていったことです。キング博士は、公民権運動の初期から「自分の魂が荒れている人は、非暴力になりきれない」と強調しました。
世界の中ではっきりと異なる社会から来た三人が、その中核の思想においてこれほど一致しているという事実。これは極めて重要なメッセージです。
−−教授は昨年、「ガンジー・キング・イケダ」をテーマにした倫理教材の共同執筆者であるローレンス・カーター教授(モアハウス大学)とともにSGI会長と会談し、創価大学・学園を訪れました。SGI会長の教育思想をどのように評価されますか。
私はニーチェが好きで、新しいものに対して「まず疑ってかかる」という懐疑的な探究心をもっていますが、率直に言って池田博士の一流の人格、幅広い業績に敬服しました。池田博士は相手の可能性、善性を最大限に引き出す不思議な力をもっています。と同時に、自立と自律の気高さをもった方です。
「教育」とは、まさに人間の中に最高の可能性を発見し、それがその人の人生に発現するよう導く作業であると私は信じます。そのためには知識の詰め込みでなく、対話・啓発の教育でなければならない。
その意味で池田博士自身が、理想の教育者の模範であると感銘を受けました。しかも、それを押し付けるところがない。一流の一流たるゆえんです。
創価大学や関西創価学園を訪れた二日間に、私は生涯忘れ難いインパクトを受けました。肩書や立場をまったく超えて、私たちを「人間として」愛し、敬意を払い、受け入れてくれた学生たち。私は、百万の美辞麗句よりも雄弁な、創価教育の何たるかを目の当たりにした思いです。
私も詩人であり、著作や写真作品を通して池田博士の詩心と審美眼に魅了されました。詩的な表現を使わせてもらえば、私は教育を通じて人々の精神を薫発(くんぱつ)する池田博士の存在を「光の使者」と呼びたい。ギリシャ神話の中で、自らの受ける苦難を恐れず、裸でふるえている人間に天上から火を運ぶ「プロメテウス」の雄姿に、池田博士のイメージが重なるのです。
−−教授はイリノイ州の「最優秀大学教授」(一九九七年)の表彰を受けるなど、教育者として高い評価を得ています。優秀な「教師」の資質とは何であるとお考えですか。
過分な評価に恐縮しますが、私の信条をお話しします。教師は生徒に対して「敏感」で、「対応が迅速」でなければなりません。鈍感な人、反応しない人は良い教師になれません。
罰や規則による強制力に頼った教育は、もはやこの時代に通用しません。それに代わるのは、生徒の自立と自律をはぐくむ啓発力です。その最高の模範が池田博士の教育思想であり、ガンジー、キングの精神遺産です。「ガンジー・キング・イケダ」は教師にとっての偉大な教師と言えるでしょう。
今の社会は経済的には発展していても、精神的には破産状態です。人々は物欲主義に染まりきってしまい、「他者を傷つけ、け落とす」ことを成功の道とする競争原理が横行しています。
これからは「どれだけ他者を助け、共に働けるかを競う」ような、創価教育の父である牧口初代会長が提唱された「人道的競争」の社会を志向すべきです。
そのために教師はどのような模範を示すべきか。まず、自分と異なる人間や価値観を恐れず、排除せず、理解しようとする「勇気」です。知識の一方通行でなく、双方向の対話を軸とした教室での「民主主義」の鍛錬です。生徒を愛せない者が教育などできません。
私は仏法の十界論に優れた教育論としての魅力を感じます。十界の中でも「声聞」や「縁覚」には、知識や技術の誤用・悪用によって生命を脅(おびや)かしてしまう傲慢さがあります。それを乗り越えるには、「菩薩・仏」の慈悲の眼が必要です。
こうした教育哲学として非常に有益な仏法の人間主義を基調とする「アメリカ創価大学」の誕生に、私は大いに期待しています。
略歴
George David Miller
哲学博士。オハイオ、シカゴ芸術、北イリノイ、デポール、ロヨラの各大学で教べんを執り、1991年からルイス大学教授。同大学の10年間で100に及ぶ講座を教えるとともに、『地球倫理の選択』『真理に向けての交渉』『特質的な倫理』などの倫理・哲学書を執筆。自作の詩集も編んでいる。現在、進めている「ガンジー・キング・イケダ」の思想をテーマにした大学の倫理教科書は、カーター博士(キング国際チャペル所長)、ラダクリシュナン博士(インド・ガンジー記念館館長)との共同執筆。