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【米国の識者に聞く−インタビュー2000】


仏教徒・キリスト教徒研究学会 ポール・イングラム博士

(2000年10月24日付)



宗教間の対話通し世界に平和を

池田会長からの連帯のメッセージに感謝




 パレスチナ争乱をめぐり、各国・国連指導者による懸命の和平工作が続いている。 「戦争と暴力の世紀」と言われた二十世紀を締めくくる時期に、根深い宗教間の対立 を底流に抱えた国際紛争が世界の注目の的となっていることは、二十一世紀の人類の 前に立ちはだかる壁を如実に象徴しているようだ。アメリカを中心に仏教徒とキリス ト教徒との宗教間対話を推進している学術団体の草分け的存在である「仏教徒・キリ スト教徒研究学会」のポール・イングラム博士(宗教学)に、創価学会インタナショ ナル(SGI)の平和への貢献について聞いた。

(ワシントン州タコマ・長岡良幸特派員)


 東西の学識者を結ぶ活動を展開

 ――一九八〇年に創立された「仏教徒・キリスト教徒研究学会」は東西の学識者を 結ぶ宗教間対話の先駆的役割を担ってこられました。貴学会の目的を聞かせてくださ い。

 私たちは国際会議を四年に一度、合衆国内の会議は毎年、行っています。この学会 は、学究的な目的のもとに組織されており、もっぱら人類が抱えている共通課題に関 して、仏教徒とキリスト教徒の対話を推進しています。

 現在の地球的課題群は、宗教の違いに関係なく、すべての人間の未来に立ちはだか っています。例えば、仏教徒にもキリスト教徒にも「貧困」で苦しんでいる人々がい る。「性差別」や「人種差別」も、宗教に関係なく、人類が現実に苦しんでいる問題 です。さらに「戦争」や「平和」の問題もしかり。これらは、どの宗教を信仰してい るかにかかわらず、人類全体が抱えている問題です。

 こうした社会正義や環境問題などの普遍的な課題の解決に向けて、仏教徒とキリス ト教徒が互いに学び合い、協力し合う必要があると認識しています。

 なお、もとより宗教間対話は仏教とキリスト教に限定すべきではありませんが、当 学会の発足当初から私たちは「私たちの成果が、さらに多角的な宗教間対話の成功へ の一つの礎(いしずえ)になれば」という意識で、まず二つの宗教グループの対話か ら始めて今日に至っているのです。

 「地球を癒す」テーマに国際会議

 ――本年は四年に一度の国際会議ですが、会議のテーマ、焦点は何ですか。

 今年の会議は「グローバル・ヒーリング(地球を癒〈いや〉す)」に焦点を置きま した。今世紀において私たち人類があまりにもひどく傷つけてしまったこの地球を、 世界を、どうやって癒していけばいいのか。今こそ、その方向性を模索する必要があ ると考えたからです。それが二十一世紀のスタートとなるのではないかと。

 テーマに関連するさまざまな分野で分科会議を開きました。

 例えば、「消費中心主義」の影響は環境問題と大きくかかわっています。ですか ら、環境問題を取り上げるなら、“モノをひたすら追い求めて資源の乱開発を続けて いる生産者と消費者”の心理構造とその変革も考えなければなりません。

 「暴力」から「非暴力」へと社会変化を望むなら、消費中心主義や環境問題は避け て通れません。

 このように、あらゆる問題が密接に相互関連しているわけで、長期的な解決への啓 発に結びつくような討議を提起していこう、そして各問題点を相関的に見ていこうと いうのが、今回の会議の目的です。

 池田SGI会長から素晴らしいメッセージをいただき、またSGIの皆さんには分 科会を担当していただいたり、関連行事として「自然との対話」写真展の開催など、 お世話になりました。会議の運営者一同、心から感謝しています。

 エネルギッシュで価値を生むSGIメンバー

 ――SGIも宗教間対話の重要性を認識し、社会に訴えています。貴学会の活動を はじめ、各地で行われる宗教間対話にも積極的に参加しています。

 仏教徒とキリスト教徒の対話に対するSGIの貢献は、非常に大きな役割を果たし ています。私の知る限り、現在のアメリカにおける仏教団体の中では、SGIが最も 積極的に宗教間対話を行っているのではないでしょうか。

 SGIのメンバーはとてもエネルギッシュで、対話が上手ですね。池田会長のメッ セージからも、SGIの最高指導者自身がどれほど対話の力を重んじておられるか、 私は強い感銘を受けました。

 ――博士は博士課程で鎌倉仏教の研究を専攻されたとうかがいました。私たちは日 本の仏教始祖の中で日蓮が最も信仰者の社会的使命、社会変革へのかかわりを自覚 し、行動したと自負しており、宗教者として社会の課題に積極的に取り組むSGIの 行動は日蓮の精神を正しく受け継いだものと考えております。

 その通りです。SGIは常に社会の最前線で行動を起こしている生きた組織である ということです。

 仏教は、すべてのものが互いに深くかかわり合っているという相互依存性を説いて いますから、本来の仏教の精神からすれば、団体としても個人としても、社会とのか かわり方が前向きになっていくのは当然です。

 仏教の智慧(ちえ)は、一般にイメージされるような、隔絶した世界で悟りを目指 すものではありません。現実社会の相互依存的構造を深く理解し、慈悲の心を持って 他人や社会、環境にかかわる力を発揮することができるのです。智慧と慈悲は常に相 互関係にあります。この考え方こそ、仏教のすばらしい英知です。

 急速に広がる米国での仏教理解の輪

 ――対話には「教育の力」があります。宗教が盲信・盲従を防ぐためにも、対話に よる教育的啓発が大事であると考えます。

 まったく賛成です。

 アメリカ人の多くは生まれながらにキリスト教徒ですが、実際には自分が信仰して いる宗教に対する理解の浅い人があまりにも多いのです。

 翻って、SGIはメンバーに対する教育という点で、すばらしい業績を上げてきま した。SGIのシアトル文化会館へ行ったとき、会合に参加しているメンバー全員が 仏教の根幹部分を知り、意味を正しく理解しているということに大変感銘を受けまし た。御本尊とは何か、なぜ題目をあげるのか、どうやって勤行を行うのか、みんなよ く知っていました。

 アメリカの仏教はまだまだ少数派で認知度も低いですが、こうした宗教間の対話が 進むことによって、私はアメリカにおける仏教の理解が急速に広まっていくと見てい ます。




略歴

Paul O.Ingram

 パシフィック・ルセラン大学宗教学教授。各国の学者、宗教家、社会活動家らが参 加する「仏教徒・キリスト教徒研究学会」(SBCS)の中核として会長職など歴 任。本年8月に米ワシントン州タコマ市の同大学で開催されたSBCSの国際会議で は実行委員長を務め、1週間にわたる多彩なプログラムを推進、成功させた。著書 に、宗教の歴史考察をテーマにした『雄牛との戦い』、宗教間対話に関する『解放さ れた真実の音』など多数。



後記

宗門からの独立を称賛

 イングラム博士の大柄な体は威圧感を与えない。一言話すだけで、誠実な人柄が相 手を包むからだ。

 その博士が、インタビューの中で一度だけ強い怒りを露(あらわ)にした。日顕に よる正本堂破壊に言及した時である。「これは悲劇です。何百万もの人々の信仰の中 心となっていた、あのように美しい建築を破壊するとは、なんと冷酷なことをするの だと憤(いきどお)っています」

 そして、再び笑顔で「しかし、SGIの独立は本当に良いことでした」と。

 仏教に造詣の深い博士は終始、SGIの社会に対する行動力を絶賛。「実践は宗教 の生命である」との格言をあらためて実感した。