
(2000年7月18日付)
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平和創出の源泉・創価教育に期待 情報に振り回されない“人間の土台”を作りたい |
明年、カリフォルニア州オレンジ郡に開学するアメリカ創価大学(SUA)の「人 間主義」を掲げた教育理念に対し、アメリカならびに各国の識者から期待の声が寄せ られている。特にSUAが「環太平洋地域」に光を当てたプログラムを特色の一つと することから、太平洋諸島の教育関係者からも注目を浴びている。「南太平洋を代表 する知性の一人」として著名なランギ・カバリク博士(トンガ王国副首相・教育大 臣)にインタビューした。
(トンガ・長岡良幸特派員)
――副首相は今年一月にグアムで開催した「太平洋諸島・新千年紀平和会議」(創 価学会インタナショナル、アメリカ創価大学、グアム大学が共催)に、トンガ王国を 代表して出席されました。その折の「平和創出の源泉として創価教育に期待する」と のスピーチは、哲学と詩心に満ちた内容で会議の白眉(はくび)となりました。
過分な評価に恐縮します。私は、グアムの会議を通じて池田会長の教育理念と(牧 口、戸田、池田の)三代の会長に貫かれたSGIの平和行動に強い感銘を受けまし た。それ以来、池田会長が創立された創価大学の教育内容に注目し、私なりに学び、 研究してまいりました。深く知れば知るほど、「創価教育」は実に素晴らしい。
池田会長は「教育」を人生最後の事業とされていますが、私も同じく「教育」が我 が人生最大のテーマです。グアムの会議でも申し上げましたが、教育の目的は「知る ために学び、行動するために学び、己(おのれ)自身であるために学び、(学んだ成 果を)分かち合うために学ぶ」ことであるというのが、私の信念です。
すなわち教育とは、「人間自身」をつくるものである。まさに創価教育は、この目 的に合致する理想の教育です。
私は特に、来年オープンする「アメリカ創価大学」に期待します。英語による教育 という点からも、トンガの優秀な人材を送るのにふさわしい大学であると考えます。 これまでもトンガから多くの留学生が西欧の著名な大学に学んでおりますが、明年か らは、アメリカ創価大学も重要な選択肢として視野に入れたい。
――今や世界を席巻(せっけん)する「グローバリゼーション(地球化)」の波 が、この太平洋諸島にも訪れています。情報通信技術(IT)革命によって、国と国 の距離、異なる文明社会に住む人間と人間のコミュニケーションの距離はグングン縮 まっています。しかし、機械に囲まれて育った世代は、人間として他人の痛みに鈍感 となり、人間同士の「心の距離」は反対に離れているように思われます。
その通りです。
だからこそ、創価学会のもつ美徳が必要なのです。あなた方の運動は、(グローバ リゼーションによって進む世界の変化の)一切の基盤となる土台をつくっているので す。
このトンガにおいても、かつてない勢いでありとあらゆる情報がなだれ込んできま す。
しかし、それを受け止める人間の方に、しっかりとした土台が築かれていないのが 問題です。だから、振り回されるだけで、それらの新しい情報や知識を生かし、使っ ていけない。
まず「人間」です。人間の土台をつくることです。それによって人々は、新しい知 識を「理解し」「尊重し」「価値ある交流の糧(かて)とする」ことができるので す。
かつては、のんびりしていた我々の生活も、西洋の国々のようにあわただしくなっ てきました。
昔は、外国からの船が着くのを港に出て海を見ながら三カ月も待ったものですが、 今はパソコンのボタン一つで船の場所がわかる。私が若い頃は、仕事で三日間くらい オフィスを離れていても、帰ったときに何も変わったことがないという感じでした が、今ではこのように、数分間のうちに新しい書類が次々とたまっています(笑 い)。
私は、先進技術を否定するものではありませんが、論議の根本となるものが見える ためには、先程から強調している「人間の土台をつくる」ことが必要なのです。それ があって初めて、誤りなき我々の進路が見えてくるでしょう。
これは、我々の世代よりも、未来に生きる若い世代の双肩にかかってくる課題で す。未来世代にはかわいそうですが、プレッシャー(圧力)はいよいよ重くなりま す。こうした課題は、トンガばかりでなく、日本でも同じではないでしょうか。
――トンガでは「ファミリー(家族)の価値」が非常に重んじられます。副首相も ご夫婦で多くの養子を引き受けられ、合わせて十七人の子どもを育ててこられまし た。お子さんの中には政府の要職を担われている方もいます(次男マサソ・パウンガ 氏は労働・通商・産業・観光大臣)。世代間のギャップ(溝)も多々感じられるでし ょうが、未来世代に対してどのような期待、あるいは心配を持っていますか。
(笑いながら)子どもの数が多くて驚かれたでしょうが、養子を育てるのはトンガ の伝統なのです。家族・親類、あるいは友人の家族において、親が亡くなったり病気 などの都合で子どもを育てられなくなった場合に、余裕のある夫婦が代わって親とな り、子どもを引き取るのです。
大きくなった年上の子どもたちが、幼い弟妹の面倒を見て上げるのも、トンガの社 会の美徳となっています。
ただし、私は(大臣職にある)自分の立場や特権を使って子育てをしたことはあり ません。大学に行った子どもたちは全部、国費の奨学金を使わずに、私たち家族が銀 行ローンを組んで私費で学んでいます。
子どもたちの世代を見ていて、世代間のギャップを感じることは多くありますが、 「彼らは間違っている。だから心配だ」とは思いません。
このギャップを埋めるには、若い世代が自分たちの時代の進路を見いだすために は、何が必要か。
私は、価値観の「再翻訳」とでもいうべき作業ではないかと考えます。「愛」や 「正義」という永遠不変の価値を、若い世代は若い世代の言葉で、興味を感じる表現 で、受け継いでいくべきである。
今、宗教の現場でも、教育の現場でも、そのための努力が行われています。
私が創価学会の運動に共鳴し、期待するのも、その世界的な先駆を創価の平和・文 化・教育の運動に見いだしているからです。
略歴Langi Kavaliku
トンガ王国の副首相兼教育大臣。同国の教育大学等を所管するとともに、太平洋の3大大学に数えられるフィジーの南太平洋大学の副総長職など近隣諸国の高等教育の発展にも尽くしている。本年1月の「平和会議」には、南太平洋のトンガからグアムまで17時間かけて飛行機を乗り継ぎ、出席。対話と納得を重視する「パシフィック・ウエー(太平洋方式)」を訴えたカバリク副首相のスピーチは「参加者に最も感銘を与えた」と評価された。
後記伝統と西洋合理主義の複眼の人
カバリク副首相は、イギリス、アメリカの有名大学に留学経験があり、トンガの伝 統文化と西洋の合理主義の両方を複眼的に見ている。インタビューでは、東西の伝統 的な知を身につけた「南太平洋の英知」が、今、二十一世紀を望んで見つめている先 が「創価教育」であるとの感を深くした。クーデターに揺れる隣国・フィジーの南太 平洋大学を再建する大学運営委員会の委員長の大役も担っており、今後も海を越えた 活躍が続く。美しいトンガの海岸に池田SGI会長の平和貢献を顕彰する「イケダ・ ビーチ」が誕生したことを、心から喜んでいた姿が強く印象に残った。