
(2000年4月18日付)
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人格こそ偉大な精神の価値 キング博士の母校から非暴力の発信 |
今月二日、アメリカ公民権運動の大指導者、マーチン・ルーサー・キング・ジュニ ア博士の母校である、ジョージア州アトランタのモアハウス大学に「融和のためのガ ンジー研究所」が創立された。ガンジー、キングの精神の衣鉢を継承する記念式典に は、池田SGI(創価学会インタナショナル)会長が連帯のメッセージを贈るととも に、キング家、ガンジー家の人々はじめ人権・平和活動家が多数出席し、ガンジー研 究所の創立を祝した。「なぜ、今、アメリカでガンジーなのか?」――式典を主催し た同大学・キング国際チャペルのローレンス・カーター所長に聞いた。
(アトランタ・長岡良幸特派員)
――キング博士はどのようにガンジーのことを学んだのですか。
それは、モアハウス大学で出会った恩師、ベンジャミン・メイズ第六代学長によっ てです。
メイズ学長の目標の一つは、「人種の分離・差別」という、教育、企業、社会、法 律の現場に存在する、また、人間のひとつの文化として染みついてしまった悪弊を、 アメリカからも、世界からもなくしたい、ということでした。
一九三六年、メイズ学長は、同じモアハウス大学の卒業生であったハワード・サー マン博士夫妻とともにインドへ渡り、ガンジーと会いました。そこで、彼の指導する 「非暴力思想」がアメリカの差別をなくすために有効かどうかたずねたのです。メイ ズ学長たちはガンジーに学んだ最初のアフリカ系アメリカ人です。
キング博士はメイズ学長を深く敬愛しました。ガンジーの思想を徹底的に学ぶの は、その後ですが、最初のきっかけは、恩師・メイズ学長です。
――いわばガンジーの非暴力思想をアメリカの人権運動に取り入れようとした恩師 の念願を、キング博士という偉大な弟子が実現したと言えますね。
その通りです。この二人の精神を受け継ぐモアハウス大学で、私が取り組んでいる 仕事の一つは、「マーチン・ルーサー・キング・ジュニア」を人々にあらためて認識 させることです。というのは、彼のことを深い意味で理解している人は少ないからで す。
人々は、伝統主義的な思考の枠にはめてキング博士を“神格化”しようとします。 しかし彼は、「真理」を実現する使命によって彼自身を“浄化”しようとしたので す。狭い教条的な思考の枠を超え、人類普遍の「真理」を基軸としようとしていた点 で、キングとガンジーは共通しています。
私は、モアハウス大学のためだけでなく、広くアトランタのため、アメリカのため に、ガンジーを宣揚したいのです。極端に言えば、この国でガンジーは無視されてき ました。それは彼が“他の世界”であるアジアの人だからです。
この点、キング博士の視野は世界に開かれていました。ある時、(バプテスト教会 の牧師であった)キング博士は、「今世紀を代表するクリスチャンはだれでしょう」 と問われて、「ガンジーである」と答えました。もちろん、ガンジーはキリスト教徒 ではなく、ヒンズー教徒です。
――カーター所長は「ガンジー、キングの精神を受け継ぐ式典」に池田SGI会長 のメッセージを要請され、SGIの協力を求められました。
池田会長の講演集を読み、「ガンジー、キングが残した人類普遍の価値を継承する 式典には、この方のメッセージが絶対に必要である」と確信したのです。急なリクエ ストにもかかわらず、池田会長は即座に反応してくださり、感激しました。しかも、 メッセージは私の高い期待をさらに超えるパワフルな内容で、全文を式典のプログラ ムに印刷し、全参加者に「熟読してください」と呼びかけました。
SGIのご協力にも、心から感謝申し上げます。ガンジー、キングの「地球大の視 野」を考えると、私どもの式典に仏教を基盤とする人々が参加してださったことに意 味があります。
私たちは、アメリカ人の視野を、特に、次代を担う学生たちの視野を、世界に開く ことが大事です。ガンジーの理念は「地球という大きな教室」で学ぶべきものですか ら。
人間の偏狭な傲慢さは、ドグマティズム(教条主義)などの厄介な悪弊を生み出し ます。そうした方向へ行かないために、ガンジー、キングの精神を人類の財産として 宣揚しているSGIのような「開かれた視野」の人々とともに進んでいけることを大 変喜んでいます。
――いずれの国でも、運動でも、先行世代が苦労して築き上げた「精神の財産」 を、いかに新しい世代に受け継ぐかが焦点です。
今まさに「価値の革命」が進んでいると考えます。特に大学は、学生が、自分の人 生の価値観を見つけ、培うところです。私たちは「目に見える物質的価値が最高の価 値である」という社会に生きてきました。
しかし、「精神性の価値」については誤解や無認識が多い。多くの人が「人格こそ 偉大な精神の価値である」ことを知らない。
「説教ばかりで、本当の価値を実行・実現してみせる大人がいない」ということが 大きな問題なのです。ガンジーの思考は「もし変革を望むならば、まず自分が、その 変革であらねばならない」というものです。彼自身、常に率先行動の一生でした。
結局、「真実に生きる」ということは、「知識として理解する」とか「できるだけ 努力する」などという生半可なものではありません。ガンジー、キングが自らに厳し く生き、求めた、「愛を語るなら、自らが愛であれ。勇気を語るなら、自らが勇気で あれ」という生き方に帰着するのです。
偏狭な視野を脱却し、人種や文化の壁を超えた「人類意識」ともいうべき崇高な精 神性を喚起することが必要です。それが、社会を蘇生させる偉大な力となると考えま す。
略歴Lawrence Edward Carter Sr.
モアハウス大学哲学・宗教学教授。同大学が誇る「マーチン・ルーサー・キング・ ジュニア国際チャペル」所長。新たに設立された「融和のためのガンジー研究所」所 長も兼務する。モアハウス大学は、アフリカ系アメリカ人のための男子大学として全 米一の実績を持つ名門。カーター博士は人権運動・平和運動の活動家としても著名 で、ガンジー、キングに関する著作・論文も多数執筆している。
後記熱い心が語っている
立て板に水を流すような雄弁の人。しかし、単に「言葉をしゃべっている」のでは なく、実践に鍛えられた「熱い心が語ってる」から、語り口は静かであるが人の心を グイグイ引きつける。池田会長の思想と行動に強い共感を寄せ、記念式典では「池田 会長は世界平和のチャンピオン」と紹介した。語らいの最後に、「理想はきれいだ が、現実は厳しい。自分の血を流さないで、ガンジー、キングの跡を継ごうなどと甘 いことは考えていません」と、柔和な顔がグッと引き締まった。