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【米国の識者に聞く−インタビュー2000】


インド出身の社会活動家 バワ・ジェーン氏

(2000年3月21日付)



今年は国連「平和の文化の国際年」

心を合わせれば勝利、分裂すれば敗北




 本年は国連の「平和の文化の国際年」。「平和」という人類永遠の課題を、政治・ 経済・軍事のハード・パワーによって追求するアプローチでなく、文化というソフ ト・パワーによって内実化させようという試みは、国連の「市民の顔」であるNGO (非政府組織)によって活発に進められている。長年、国連機関や国連NGOの活動 に携わり、国連を軸にマハトマ・ガンジーやマーチン・ルーサー・キングの「非暴力 思想」を広げる努力を続けるインド出身の社会活動家、バワ・ジェーン氏に「平和の 文化」とは何かを聞いた。

(ニューヨーク・長岡良幸特派員)


非暴力を定着させる教育の力が重要

 ――SGIは、世界で最も広く多角的なメンバーのネットワークを有する国連NG O(非政府組織)の一つとして、「文化」と「教育」の推進を通して「世界平和」へ の貢献を目指してきた立場から、今年のテーマ「平和の文化」の意義を重要なものと とらえています。ジェーン氏は国連機関やNGOに長く携わってこられた立場から、 「平和の文化」すなわち「平和を人間の生き方・文化として定着させよう」というア プローチをどう考えますか。

 これが「平和の政治」でもなく、また、「平和の経済」でもないところに、大きな 意味があります。

 世界に変化をもたらすとすれば、それは「政治」や「経済」の次元より深い、人間 の生き方としての「文化」を通してこそなされるものと私は考えます。「ポリシー (政策)」が先ではない。本物のポリシーは確固たる文化の土壌から生まれるもので す。

 「平和」と「文化」、あるいは「非暴力」と「文化」は、切っても切れない関係に あります。そして、この「平和に大きな価値を置く文化・生き方」を普遍的な社会の 規範とするためには、「教育」の役割が最も重要です。

 それは学校だけの課題ではなく、子どもたちが学校に上がる前の早い時期に親から 子への「生き方・考え方の継承」を方向づけることが大事です。

 私たちがこの世に生を受けてから死ぬまで、常に基本となる価値を持つもの、それ が「文化」です。今、暴力に対する鈍感・許容が一世を風靡(ふうび)し、子どもた ちの日常を覆う社会にあって、断固として「非暴力」を貫くことこそ、人間の生きる 道なのです。

 その意味で、私は「平和」「文化」「教育」を機軸とされた池田SGI会長の卓見 と行動に深く共鳴し、敬意を捧げるものです。

ガンジー、キングに続き国境超えた連帯を

 ――一昨年、あなたが設立にかかわった市民運動のネットワーク「非暴力のシーズ ン」は、アメリカを中心に数多くの国連NGOや教育・文化団体が加盟し、年ごとに 活動が活発になっています。「ガンジー、キングの非暴力の精神を継承する運動」 を、国連NGOが連帯する軸とした意図は何ですか。

 ガンジーの非暴力思想は、私の母国・インドの宝であるばかりでなく、人類の宝で す。

 そして、国連が設立された本来の目的は、世界大戦の反省から平和を確立するため であり、国連に軍を装備して戦争を推進することではありません。ゆえに国連は世界 のどの国・団体よりも「非暴力」を推進する組識でなければならないと考えたので す。

 一昨年はガンジーの暗殺から五十年、キングの暗殺から三十年の節に当たってお り、それぞれの関連団体が記念行事を考えておりました。私たちは、個別の努力より も、国連を舞台とした「非暴力の連帯」をつくるほうが大きな価値があると信じ、呼 びかけたところ、想像以上に大きな反応がありました。

 非暴力とは国境を超えた世界性をもつ思想ですから、いずこの地域でも人々が協力 し合うことが可能です。「心を合わせれば勝利、分裂すれば敗北」といいますが、こ のキャンペーンを成功させるには、私たちが心を一つにしなければなりません。SG Iのような活動を行っている団体と協力し合って友情関係を築き、非暴力のネットワ ークを広げていくことは大きな意味を持っているのです。

池田SGI会長の人間教育への献身に感銘

 ――現在は、今年秋の新千年紀国連総会に先だって国連で世界の宗教者による「世 界平和サミット」を開催すべく、各国を飛び回っておられますが、その精力的な平和 への行動の源泉力は何でしょうか。

 そもそも私が国連を舞台として活動してきたのは、私の信仰(ジャイナ教)の師匠 の遺志なのです。

 人生でもっとも素晴らしいことは師を持つことです。本当の師を持つことです。

 仏教徒であり、師弟の関係を最大に重んずるSGIの皆さんなら、この誉れの気持 ちを良く理解していただけると思いますが。

 私の人生は師を持つことによって開けました。何も恐れるものはありません。何か をする時に、自分のエゴに引っ張られることもありません。師の考えを実践し、実現 していくことを我が使命とできることが、私の人生の中で何よりも素晴らしいことで す。

 私は青年時代に師のもとで薫陶を受け、師の勧めで国連という国際機関で活動し、 世界中の指導者と出会いました。

 その後、師はこの世を去りましたが、その精神は私の心にいます。前よりももっと 大きな存在として、(胸に手を当てて)ここにいます。だから私の仕事は、我が師と 私の共同作業なのです。

 私には夢があります。今行っている非暴力活動を拡大して、いつかここニューヨー クの国連本部の近くに、非暴力の大学を作りたいのです。国連の平和維持活動は、人 類が学ぶべき偉大な非暴力思想を根底にした紛争解決を現地で訴えていくのが基本で あるべきです。

 非暴力の大学を作ることは、私の心の父である、師の夢でもあります。その大学が 開校した暁には、世界中の教育機関や研究所と提携させたいと思っています。

 その意味で、池田会長が創価学会の初代会長、第二代会長の遺志を継いで、早くか ら「人間教育」を掲げた教育機関を創立され、ご自身の「人生最後の事業」とされて いることに強く感銘します。




略歴  Bawa Jain

 1956年、インド生まれ。デリー大学卒業後、インドで建設会社を経営。90年 代から国連関係機関、国連NGOの仕事に多くかかわり、「地球憲章」をはじめ各種 の国際プロジェクトに対する宗教間の対話と協力の促進に力を注いでいる。92年か ら95年までニューヨークのコロンビア大学で客員講師として「ジャイナ思想と非暴 力」に関する研究講座を開設。米ニュージャージー州在住。